脳神経疾患研究所・附属総合南東北病院の本年度「医学健康講座」が今月、郡山市の同病院で開講した。講座は一般市民を対象としたわかりやすい内容で、来年３月まで毎月１回の計１２回開催。
初回の講座は１９日開き、同病院理事長・総長の渡辺一夫さんが「切らずに治す最新の放射線治療とロボット手術～低線量放射線被ばくと人体の影響について～」と題して講演した。
渡辺さんは、放射線の急性被ばくと慢性被ばくの違いを説明した上で、「防御能力の範囲内の低線量であれば障害は残らない」と、健康被害への懸念を払しょくした。例えば、被ばく線量１０００～２０００ミリシーベルトの限度で、被ばくしなかった人に比べて健康被害で１・８倍のリスクがあるとし、ほかに喫煙・飲酒なら１・６倍、やせ形なら１・３倍、肥満・運動不足・塩分の取り過ぎで１・２倍、１００～２００ミリシーベルトで１・１倍として、比較した。いずれも年間積算量。
ある一定の放射線量が人体に有益な刺激をもたらすとされる「放射線ホルミシス効果」については、「ラジウム温泉などにみられるように、微量な放射線が増殖促進をもたらすなど適度な効果があるのではないか」とした。ホルミシス効果は１９８２年、米国の大学教授が提唱。ヒトの培養細胞に０・２５Ｇｙ（グレイ、吸収線量の単位）を照射しておくと、次の２Ｇｙの照射に対して２倍の修復機能を持つという実証結果に基づいている。
また、同病院は切らずに治す放射線医療とロボット手術に力を入れており、世界初といわれる中性子によるがん治療を始動させている。渡辺さんは、遠隔操作による正確なロボット手術や、がん診断と治療のための最先端医療・ＰＥＴ（ペット）検査、ガンマナイフ治療、陽子線（粒子線）治療も取り上げて分かりやすく説明した。
ＰＥＴは全身を一度に撮影し、がんを映し出す陽電子放射断層撮影。主にがん、心筋梗塞（こうそく）、アルツハイマー病などを診断する。ガンマ線（放射線）手術のガンマナイフ治療は、切らずに治す脳の最先端治療とされ、苦痛を伴わない短期間の照射手術のため体の負担、合併症が少ない。がんの脳転移、三叉（さんさ）神経痛、てんかん、パーキンソン病や深部の病巣にも適用される治療法。陽子線治療はガンマナイフと同じく、切らずに治せる画期的ながん治療法。
病巣を高精度のピンポイントで治す高度医療について、渡辺さんは聴講者の質問を受けながら分かりやすく説明、病状の早期発見を呼びかけた。
医学健康講座は毎月木曜日に開催する。午後２時から。
５月以降の日程と演題、講師は次の通り。
５月１７日＝「前立腺疾患と女性排尿異常の予防と治療」（総合南東北病院院長代行・深谷保男）▽６月１４日＝「大腸がんのはなし」（南東北医療クリニック院長代行・中澤敏弘）▽７月１２日＝「肝がんのはなし」（総合南東北病院院長・寺西寧）▽８月１６日＝「『麻薬』は『魔薬』？『真薬』？」（総合南東北病院緩和ケアセンター長・半澤浩一）▽９月２０日＝「放射線治療と放射能」（南東北がん陽子線治療センター・高田彰憲）▽１０月１８日＝「冬季感染症～インフルエンザとノロウイルス～」（総合南東北病院感染管理担当看護師長・高木光恵）▽１１月１５日＝「腰痛に関するお話」（南東北医療クリニック副院長・鹿山悟）▽１２月２０日＝「脳動脈瘤について」（総合南東北病院副院長・渡辺善一郎）▽１月１７日＝「食品と病気」（総合南東北病院総合医療センター所長・樋口健弥）▽２月２１日＝「ＶＰＤ（ワクチンで予防できる病気）を知っていますか？」（総合南東北病院小児・生涯心臓疾患研究所所長・中澤誠）▽３月２１日＝「がんの人の気もちを和らげる」（総合南東北病院呼吸器疾患研究所所長・宮元秀昭）