環境問題や健康に視点を置いた「ロハスの工学」により、福島の復興を考えようという市民公開シンポジウムが３月１０日、郡山市の日大工学部であった。同大工学部工学研究所が主催した。

　日大工学部は、東日本大震災以前からロハス（Lifestyles of Health and Sustainability）をキーワードにした健康で持続可能な生活スタイルを実現するための研究や教育を進めてきた。こうした中で今回のシンポジウムは、震災、原発災害、風評被害に苦しむ福島県の自立復興に向け、「健康」「再生可能エネルギーの利用推進」「安全・安心な社会づくり」の視点で同大工学部の果たすべき役割を考えた。

　シンポジウムは基調講演、話題提供、パネルディスカッションの３部構成。はじめに出村克宣日大工学部長があいさつした。

　基調講演で小野沢元久氏（同大理事、元工学部長）は「ロハスの工学への期待とその果たすべき役割」と題し、地球温暖化の脅威と人が生活するうえでの地球への負荷、原発・放射汚染問題、２１世紀のモノづくりと産学官ネットワーク、グリーン・ニューディールを取り入れた福島復興、ロハスの家の取り組みなどについて幅広い観点で考察した。

　この中で小野沢氏は「（現実的選択で）環境か経済かのどちらかを取るとすれば、現実は経済を取ってしまう」とした上で、「どちらも立つようなトレードオフの関係、産業構築を考える必要がある」と強調した。グリーン・ニューディールを取り入れた地場産業の活性では「自動車産業を支えた工学技術だが、今度は住宅産業を中心とした産業構造へと変えていく必要がある」と述べた。

続いて、菊池辰夫氏（郡山医師会長、菊池医院院長）は「東日本大震災後の郡山医師会の取り組みと小児科医としての役割」と題して講演、救急医療における小児科医の２４時間体制や子どもの心のケアプロジェクトの現況などを説明した。また、郡山市の太田熱海病院が震災翌日、原発近隣の特養ホームの入居者１００人を短時間で受け入れた医療支援体制について言及したほか、放射線の低線量環境下で暮らすための産業創造に関して日大工学部への期待を寄せた。

話題提供では、山形大名誉教授の横田俊幸氏（日大工学部非常勤講師）が「郡山市住民の放射線被ばくモデルについて」、非電化工房代表の藤村靖之氏（日大工学部客員教授）が「那須町における放射線被ばく対策とエネルギー自給の取り組み」、日大工学部教授の岩城一郎氏が「日本大学工学部のダイナミズム構想～次世代ロハス工学研究会の取り組み～」、同大工学部教授の平山和雄氏が「除染活動と再生可能エネルギー獲得の接点」、同大工学部准教授の伊藤耕祐氏が「ロハスの家の浅部地中熱利用技術による“ふくしま”の復興」について研究成果や最新情報を提案した。

基調講演と話題提供者６人によるパネルディスカッションもあった。

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　日大工学部は２００９（平成２１）年、構内に風力発電や地中熱抽出、雨水利用などの最先端技術を駆使した「ロハスの家」１号機を完成させている。地元企業など５社との共同開発。１０、１１年にはそれぞれ２、３号の家が完成した。

　問い合わせは、日本大学工学部（郡山市田村町徳定字中河原１、電話024-956-8888）へ。

URL. http://www.ce.nihon-u.ac.jp


　　　　　　　　　　　　　　（2012・3・24）