昨年十二月、急性心筋梗塞（こうそく）のため77歳で亡くなった元喜久田町商工会副会長、安藤喜一さん＝郡山市喜久田町菖蒲池＝の手作り木工品や水墨画、写真を展示する遺作展が、10月31日から同市喜久田町堀之内のアトリエ蔵で開かれる。
　安藤さんは安積郡富田村（現郡山市喜久田町）の農家の長男として生まれた。家業を継ぐ傍ら、倉庫、事務所の賃貸業を営み、商工会の役員を長年務めた。地域からの信望も厚く、喜久田中ＰＴＡ会長、郡山市明るいまちづくり推進委員会喜久田地区会長、喜久田町第6区区長などの公職もこなした。20代のころから盆栽を趣味としてきた安藤さんだが、年齢を重ねるごとに趣味の領域は写真、木工品、水墨画と広がっていった。50代を迎えてからはゴルフやスキーなどアウトドアにも興味を持ち、休みには孫たちと連れだってスキーにも出掛けた。
　10数年前に自宅離れに10畳2間ほどの広さの工房を構え、仕事の合間を見つけては木工品づくりなどに没頭。亡くなる直前まで製作に打ち込んでおり、仕上げた作品を大事に飾っていたという。
　多趣味で知られた安藤さんは、地区の文化祭に盆栽や木工品などをたびたび出展していた。そんな安藤さんが生前、友人や家族に「一度は個展を開いてみたい」と話していたことから、商工会の仲間が「友の願いをかなえてあげたい」と先月、メンバー8人が集まり世話人会を組織、作品展の準備に取りかかった。
　
　遺作展の代表世話人である喜久田町商工会顧問の千葉昭さん（78）とは竹馬の友。商工会でも会長、副会長の間柄だった。事務局世話人を務める鍼灸（しんきゅう）師の秦勝久さん（62）は「安藤さんは患者さんでもあり、生前の願いを何としてもかなえてあげたかった」と話す。こうした友人の後押しで安藤さんの遺作展が実現する。
　30年近くにわたり、木工品など数多くの作品を製作し、子や孫、友人らにプレゼントしてきた安藤さん。今回展示する作品は、水墨画、写真、それに踏み台やお茶盆、菓子盆、コマ、置物などの木工品合わせて約60点。このうち、水墨画は浄蓮の滝や布引高原、自宅近くの神社から見た安達太良山などの風景画約30点を展示する。
　遺作展を前に、妻の眞寸子さん（77）は「多くの方たちのお力を借りて、作品展の準備が進められました。故人もきっと喜んでいることでしょう。ぜひ、たくさんの人に見ていただき、また、このような（放射能被害の）大変な時期だからこそ少しでも安らいだ気持ちになっていただければうれしい」と話す。
　水墨画・遺作品展は31日から11月6日までアトリエ蔵で開かれ、水墨画や色紙、写真、木工品など力作が出展。友人や知人、親戚らが訪れ、安藤さんの在りし日をしのんだ。