総合南東北病院（郡山市、渡辺一夫理事長）は９日、「健康フォーラムｉｎ福島２０１２」を同市のホテルハマツで開き、放射能と健康のかかわりについて考えた。
　財団法人・脳神経疾患研究所附属総合南東北病院の創立３０周年を記念しての開催。
  はじめに、彩都友紘会病院長で大阪大名誉教授の中村仁信氏が「慢性低線量被ばくの人体への影響」と題して講演した。
　中村氏は「１００ミリシーベルト以下の低線量での発がんリスクの増加は、広島や長崎の原爆被爆者の長期追跡調査でも、影響はほとんど確認できない」とし、低線量の慢性被ばくで放射能の健康被害がほとんど見当たらない点を各種データで示した。こうした点で「福島県からの避難は必要がないだろう」とした。
　具体的には①低線量（１００ミリシーベルト以下）被ばくを受けても、人体には修復機能があるためＤＮＡの損傷は２日もあれば治る②一度に浴びるのと、何回かに分けて被ばくするのでは影響が違う。ネズミによる実験では、６０ミリシーベルトを一度に浴びると皮膚障害が起きるが、３ミリシーベルトを２０回に分けて浴びると影響はない③がんは複数のリスクが重なって多くの遺伝子が傷ついて発症する④がん発症の要因となる活性酸素は一日に１０億個でき、数万から数十万個の遺伝子の損傷ができる。放射能１００ミリシーベルトで遺伝子の損傷は２００個ぐらいで大した数ではなく、修復が可能⑤過去に発表された、放射線の影響を受けたショウジョウバエのオスに交配させると突然変異ができた点については、オスの精子には修復機能がないからであり、特種な生物での実験である。
　加えて、⑥アルコールの飲み過ぎや、食べ過ぎ、塩分の摂り過ぎを控え、野菜不足、運動不足を解消する方が、がん死亡リスクが低下する⑦国際放射能防護委員会（ＩＣＲＰ）は「微量の放射線による発がんリスクを直線閾値（しきいち）なしのモデルに基づいて多くの人に適用し、発がんやがん死亡を論ずることは妥当でない」と警告している⑧防御能力の範囲内の低線量であれば障害が残らないばかりか、継続的な被ばくにより放射線に拮抗する変化が細胞内で起こる⑨年１ミリシーベルトという公衆被ばくの限度は、超えると影響が出る線量ではなく、各種の規制や施策を実行するために用いられる防護量としての線量である⑩年１ミリシーベルトはとても少ない線量であるが、あくまでも意味のない被ばくは避けようという観点から決められている、とした。
　介護士でもある衆院議員の山口和之氏は「２０３０年のフクシマから今を考える」と題して講演。震災での多くの支援活動に感謝した上で、「今は何が大切で、何が幸せであるかを考え直さなければいけない時。ピンチをチャンスとしてとらえよう」と述べた。メディコンバレー（医療産業都市）構想や、ＩＴ（情報技術）の活用、未来農業、スマートタウン（環境都市）構想などをビデオで紹介した。
  デューク大学脳神経外科教授の福島孝徳氏は「２１世紀の脳神経外科手術」について講演した。「神の手を持つ」とも言われ、国際的に活躍をしている脳外科医の福島氏は、数多くの臨床例を紹介した上で、脳ドック受診の大切さを訴えた。
  最後に座長を務めた渡辺理事長は「世界一幸せを感じ、住みたいと思う福島県にするため県民みんなで頑張って行こう」と呼び掛けた。

【写真：（左上から右に）講師の中村氏、山口氏、福島氏、座長の渡辺氏】