コラム「産業遺産保存と警鐘を」
　▼日本が近代へと進む歩みの中で経済の進展をになった石炭、製鉄、鉱山などの重工業。現在の日常生活からは忘れ去られ、廃墟となった建物跡が当時の面影を残す。
　▼平成19年、経済産業省は産業の進展を牽引したれきした歴史的建造物５７５件をヘリテージ「（近代化産業
遺産）に認定した。この中には長崎県の端島（軍艦島）や福島、茨城両県にまたがる常磐炭田関連遺産15件と八茎鉱山
関連遺産1件も含まれる。
　▼邦画「フラガール」でも知られるようになった常磐炭田は本州細田規模の炭田群だ。
　いわき市はいわきヘリ猪テージ「・ツーリズム協議会、常磐炭史研究会などの団体が鉱山の廃坑跡、鉄道などの跡文化遺産として保存、継承する運動を始めている。近代産業のルーツの建造物を文化遺産として役立てる運動にも本腰を入れて取り組んでいる。
　▼そうした一方で保存利活用に関しての問題も多い。「有効利用は日本は欧米など諸外国に比べて遅れている点が多い」（加藤康子著「産業遺産保存」）と指摘するように、保存へ向けた取り組みは始まったばかりである。
　▼利用しながら保存する動態保存、風化・老朽化への対応も浮び上る。所有者との共通認識といった課題もある。自治体、各種団体を取り込む基金の創設も急がれるだろう。現況だけでなく、先を見据えた視点も極めて大切となる。