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コラム・筆は一本也

「備えの甘さの象徴」

「原子力災害に対する備えの甘さの象徴」とされた、福島県大熊町のオフサイトセンター(県原子力災害対策センター)の建物の取り壊しが昨日から始まった。8年前の東電福島第一原発事故で国が現地対策本部を置いたオフサイトセンターだが、第一原発からは西側に5㌔ほど離れている。
 
▼そのオフサイトセンター。放射線防護そのものが不十分なことから、緊急対応などの役目を果たせないまま事故発生から4日後に県庁に撤退した経緯がある。跡地周辺は3年後に予定する避難解除に併せ、宅地整備されるという。たとえ県や町の復興が前提であっても宅地は甚だ疑問である。
 
▼建物の解体は本年度に終える。その後は宅地になるが、果たしで帰還者が住むだろうか。廃炉までには40年、ひょっとしたら半世紀はかかるだろう。どうしても宅地利用したいなら、いっそのこと東電社員の社宅としたらどうだろうか。嫌味で言っているわけではない。真にそう思う。
 
▼ところで、オフセンターからの撤退をめぐり、多方面から様々な意見や憶測があった。放射線量がぐんぐん上がる無防備な施設では、撤退の判断しかなかったのではないか。その一方、避難民を放り投げて行ったとも。兵を残してまず指揮官が安全地帯に逃げたと今も印象づけられている。
 
▼筆者も事故当時はこの世の終わりと思った。少なくとも平常時ではない。混乱し、迷走した。撤退の判断は、命と引き換えで使命を果たすという判断はできなかったのは事実。原子力災害対策センターとは名ばかりで、事故はまず起きないとする前提で造られたとしか思えない。【平々凡々】
                             (2019・11・26)

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