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復興への思い

近代遺産の夜明け〜未来への遺産・眠る遺産を発見しよう〜



 黒沢 永紀(くろさわ・ひさき) 都市探検家・軍艦島伝道師・音楽家・産業廃墟映像制作集団「オープロジェクト」メンバー・長崎伝習塾塾長
 東京・新宿区生まれの中野区育ち。渋谷区在住。早稲田大学文学部卒業。音楽家として社会人デビュー。2000年頃から軍艦島を取材し、その成果を多くの著作で発表。オープロジェクトでは廃線や廃道などの産業遺産を映像作品化。近年では、自ら企画した軍艦島と池島炭鉱のワンデイツアーや東京街歩きのガイドも行っている。
 著作:『軍艦島全景』(三才ブックス)、『軍艦島入門』(実業之日本社)、『軍艦島 奇跡の海上都市完全一周』(宝島社)、『東京ディープツアー』(毎日新聞出版)、『東西名品 昭和モダン建築案内』(洋泉社)、DVD『軍艦島』三部作や『廃道』三部作(以上日活)など多数。
●初めて訪れた郡山

 2019年の春、トークイベントのお話をいただき、生まれて初めて福島県郡山市を訪れる機会に恵まれました。浅学ゆえにほとんど知ることなく訪れた郡山市でしたが、唯一以前から知っていたのが本町にある「吉田薬局」です。
 
 大戦間時代のダイナミックさに魅せられ、アートはもちろん、その時代のデザインや建築にも心酔した学生時代。バウハウス、モダニズム、ドイツ表現主義、そしてアール・デコといった時代の変換期がとてもエキサイティングに感じました。
 
 そんな昭和初期の記憶を目に見える形で今に伝えているのが吉田薬局です。高梨幸平太氏の設計により、1933(昭和8)年に建てられたアール・デコの「看板建築」。いつか見てみたいと思っていた夢が奇しくもかなう形となりました。
 
●看板建築とは

 「看板建築」とは、関東大震災の後(以降「震災後」は関東大震災後のこと)に、東京を皮切りに造られた商店建築の技法で、建物の正面を垂直に立てた板状に施工して屋根瓦を隠すのが大きな特徴です。震災後に、建築基準が変更されたことたや、ヨーロッパからビルという新しい建築が流入したことなどにより、見よう見まねで生み出された工法だといわれます。
 
 これら看板建築の多くは、震災後の東京復興のために、ほかの地域からやってきた大工たちの手によって建てられたものでした。やがて東京の看板建築がひと段落すると、大工たちは自分の故郷へ戻り、東京で覚えた看板建築を地元でも建てた結果、北端は宮城県、西端は富山県あたりまで、商店街が東京仕込みの看板建築一色に埋め尽くされることになったわけです。
 
 例えば、福島市なら大町の「安斎ビル」、会津若松市なら七日町の「第二塚原呉服店」、喜多方市なら「若喜商店(店舗部分)」など、全てこの時期に建てられた看板建築です。さらに先の大戦後も、震災後をなぞるように大量の看板建築が建造されました。現在、国内の多くの個人商店は看板建築で造られていると言っても過言ではありません。看板建築とは、20世紀の日本を席巻した商店建築だったのです。
 
●素晴らしき吉田薬局
 
 冒頭で触れた郡山市の吉田薬局も、そういった看板建築の一つ。ただし、多くの看板建築が、前述のように大工の手習いで造られたのに対し、吉田薬局は建築家が設計を手がけたことが大きな特徴です。もちろん震災後には、著名な建築家が設計した看板建築もたくさんありました。福島県出身の遠藤新氏も、東京・京橋に素晴らしい看板建築を建てています。しかし、建築家を起用できるほどの商店は当然その資本力も大きく、やがて鉄筋コンクリート造りなどの本格的な建築に建て替えてしまいました。そういった意味で、この吉田薬局はとても貴重な看板建築といえます。
 
 建築家の設計ゆえに、現存する一般的な看板建築と比べて、その完成度は群を抜いています。正面の装飾一つをとっても、幾何学的な直線と曲線で構成されたデザインは、当時、世界的に最先端の装飾様式だったアール・デコを上質に仕上げたもの。また、側面上部の三段に造られた屋根隠しは、各段の長さに変化をつけることで、見事な奥行き感を創り出しています。塔屋の丸窓や歯型の軒飾りも素晴らしく、ずっと見ていても飽きません。ここまで意匠を凝らした看板建築が遺っているのは極めて珍しい例といえるでしょう。
 
 設計を手がけた高梨幸平太氏に関しては、ほとんど資料がなく、その詳細はわかりませんが、郡山市公会堂の説明書によると、公会堂の施工管理に携わり、同時に郡山市の建築事務所の草分け的な役割を果たした人物のようです。

   【写真:アール・デコが傑出した郡山の看板建築「吉田薬局」(上)とすべてのディテールにそつがない「吉田薬局」の店構え


   
 

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