言語学者で評論家の金田一秀穂さんを迎えた文化講演会が１０日、須賀川市文化センターで開かれた。
　金田一さんは「言葉の選び方、つきあい方」と題し、楽しく暮らすための言葉の役割を強調した。「正しい日本語の定義は難しい。言葉が正しいかどうかにとらわれず、言葉を心地よく楽しく暮らすためのコミュニケーションとしての道具であると考えて使いこなすこと」。そのためには、「相手や場所、自分の立場などを理解し“場を読む”ことで言葉を選び、対人社会能力を培う必要がある」と述べた。
　その上で、「言葉によるコミュニケーションは、コミュニケーション全体の２５％に過ぎない。便利だが、それ以前の言葉にならない曖昧でアナログともいうべきコミュ二ケーションが大事」と語りかけた。
　さらに「人と人との関係は無駄とも思えるようなたわいない会話で築かれており、言葉になっていない部分を感知することが、実際に話す内容より勝る」と述べ、「福島県には、真心を伝え心のこもった言葉で今なお人の心を打つ、野口シカさんと円谷幸吉さんがいた。こうした伝統を継承してほしい」と結んだ。
　年配の男性は「聴きやすくて面白かった。特に共感する部分が多くあった」と感想を述べていた。
　金田一さんは、祖父に金田一京助（言語学者）、父に金田一春彦（国語学者）を持つ国語学者。上智大文学部卒、東京外国語大学大学院修了。海外の大学などで日本語を指導。現在は杏林大外国語学部教授。