古墳時代前期（３～４世紀）に造られた福島県中通りの古墳群にスポットを当てた、大安場史跡公園（郡山市）の企画展「福島県中通りの前期古墳を考える」は、４日から同ガイダンス施設エントランスホールで開かれている。３月４日まで。

　古墳時代前期に日本には大きな勢力が生まれ、近畿地方を中心に大型の古墳が姿を現すようになったとされる。福島県域でも会津盆地、中通り中部、いわき、相双地区でこの時代の古墳が相次いで確認され、本県を含めた東北地方南部地域での首長墓のあり方がわかってきている。新しい社会の仕組みが生まれつつあったと考えられている。

　今回の企画展では、傾城壇古墳（大玉村）、団子山古墳（須賀川市）、大安場古墳のほか、浜通り、会津地方などの発掘資料を通して中通りの古墳にスポットを当てた。

団子山古墳から出土した東北最古級の円筒埴輪や朝顔型埴輪、傾城壇古墳の器台、山中日照田遺跡（郡山市）の器台や甕（かめ）、高坏（たかつき）、石畑遺跡（郡山市）の甕、砂畑遺跡（いわき市）の装飾器台など５０点以上の土器片と、玉山遺跡、朝日長者遺跡（いわき市）の資料類などを合わせて展示している。すでに人の移動があったとされる北陸、東海系土器の分布状況も解説している。

　郡山市、市教委、市文化・学び振興公社主催。県文化財センター白河館、須賀川市立博物館、いわき市考古資料館、大玉村、白河市、会津坂下町、いわき市の各教委の協力で開催。

　入場無料。午前９時～午後５時まで。月曜日休館。問い合わせは、郡山市田村町大善寺字大安場１６０、大安場史跡公園（電話024-965-1088）へ。

　
　■県考古学会の玉川さんが記念講演　「北陸、東海からの人の移動が前期古墳の出現にかかわる」
 

　　企画展記念の講演会が５日、同施設であり、県考古学会副会長で県立郡山東高校長の玉川一郎さんが「福島県の古墳の調査」と題して講演した。

　玉川さんは、古墳の年代などの基礎知識から現地調査の方法、近世・現代までの調査の流れを自らの資料やスライドを用いてわかりやすく説明した。

　古墳前期の３世紀半ばから４世紀にかけては、大和政権の成立とともに前方後円墳や前方後方墳が出現、各地に広まったとされる。この中で玉川さんは、東北地方最初の大型の前期古墳とされた会津大塚山古墳に触れ、再測量により全長が当初の９０㍍から１１４㍍に伸びたことや、学術的価値などを話した。

　県内３地方の遺跡からは、北陸系、東海系の土器が出土している点からも、人の移動が前期古墳の出現に大きくかかわっているとした。

約６０人の考古学愛好家らが参加し、熱心に聴き入った。

　　【写真：３月４日まで開かれている企画展（左・上下）と、記念講演する玉川さん（右下）】