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コラム・筆は一本也

「いかんともし難い温度差」

原発災害を受けた福島県と県外の温度差。「(放射能が覆う福島に)今も住んでいるのか」と聞かれることがある。何と答えてよいのか、どう説明してよいのか、戸惑うことが多かった。そんなことにも慣れてしまい、今は面倒くさくて答える気にもなれない。けっしてそうであってはならないが、こうした温度差は依然横たわる。東京電力福島第一原発事故から間もなく5年3カ月になろうとしている。本県産品への風評被害は相変わらず、しかし、震災・原発事故の風化は加速する。
 
▼福島原発事故による放射能の汚染は何も本県や隣接県の茨城、栃木、それに千葉県に限った話ではない。環境省が事故の5カ月後に公表したデータによると、ビリヤードながら北は札幌から南は九州まで飛散している。もっとも中部以南は㌔当たり29ベクレル以下、中国や四国はほぼゼロの状態だった。京都、神戸、長崎、大分も微量ながら飛散していた。首都・東京や群馬、神奈川、静岡、長野の各県でも観測されているわけだから、まさに日本列島が大なり小なり汚染された大災害だった。
 
▼原発事故で出たセシウム134は半減期が2年。今はかなり低減してはいるが、セシウム137は半減期が30年でそう簡単には減らない。そこで住環境の復旧に向け除染作業が行われているわけだが、除染したからゼロというわけにはいかないのが放射能汚染の深刻さだ。安倍首相や関係閣僚は何度となく被災地を視察しているが、その目は大震災によるインフラの復旧に重点が置かれている気がしてならない。1日や2日間で汚染の実態を把握出来るはずがないだろう。
 
▼関係閣僚や官僚には、ひと月ほど被災地に寝泊まりして現状をつぶさに見て回ってほしい。宅地周辺の除染は避難地域を除けばやっと50%を超えたばかり。そうした作業も見て回ってほしい。真夏日の中、作業員はヘルメットにマスク、長袖、長靴、手袋姿で奮闘している。エアコン付きの専用車で短時間見ただけでは視察にならない。東電の幹部社員の視察とボランティアはもちろんのこと。福島県内には至る所に「除染作業中」の建て看板がある。他県と温度差があるのはあたり前かもしれない。【平々凡々】
                              (2016・6・4)

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