「他人に自分がどう映って見えるか」とは巷間よく言われることだが、大震災・原発事故以降、福島県民は何かにつけてそう思わされているのではないだろうか。「次から次に要求」「自分たちだけが特別扱い」。実に悲しいことだが、こうした声が伝わってくる

▼そんな矢先、この国を司る人たちから冷たい扱いを受けたような気がした。政府が福島第一原発事故を受けて福島県が求めていた１８歳以下の医療費無料化の見送りを県側に伝えた一件だ。野田首相が先月の佐藤知事との会談で、「政府内でしっかり検討したい」と前向きな意向を示していただけに、裏切られた思いである

▼「福島県だけに無料化を認めれば、原発事故で同様の健康不安を抱える隣県などから批判が出かねない」「原発事故と無関係の病気の診察まで無料化するのは説明がつかない」といった点が理由とされるが、この国のリーダーは「国民理解」が得られないとの一言で片づけてしまった。温度差が横たわる国民理解であり、福島県民としては忸怩（じくじ）たる思いだ

▼あるシンポジウムで、こんなやり取りがあった。「国は福島県に多くの特例措置を許可すべき」という参加者の意見に、コーディネーターは「多くを主張すれば福島県が他からどのようにみられるかも考えてほしい」と、慎重な言い回しで答えた。誤解のないよう付け加えるが、そのコーディネーターは本県と縁があり、県民をおもんばかっての発言だった

▼やはり、どう考えても合点がゆかないのが国民理解だ。４文字の逃げ口上、「国民理解」で片づけるこの国のリーダーの熟慮の足りなさに悲しくなる。【笑止千万】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2012・2・2）