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コラム・筆は一本也

「花見も異様な光景」

先週は冬に戻ったようないわゆる寒の戻り、花冷えの天気だったが、今週に入って全国的に春本番の暖かい日が続いている。このまま好天が続けば、名古屋や東京に続いて福島県内のサクラも間もなく開花宣言が出そう。サクラの開花と聞いただけで自然と心もウキウキとしてくる春本番の季節だが、ところが里桜の近辺には相変わらず異様な一物が放置され、せっかくのお花見気分も台無しの気分。遠方からの観光客らは見たこともない光景に思わず驚き、「何とかならないの…」と首を傾げる始末。
 
▼今や福島の“名物”となっている異様な光景だが、その正体はブルーやブラックのシートで覆われたフレコンバッグ。原発事故がまき散らした放射能物質を含んだ土壌だが、宅地や道路の除染などで出た放射能汚染物をシートで保管している。地域の仮置き場が設けられていないケースも多く、宅地の敷地内や所有地の山や畑の片隅に放置されてえに言われぬ光景を生み出している。実に約1千万立方㍍が仮置き場に保管されているだけで、あとは自己責任とばかりに自宅敷地に保管させられている。
 
▼除染によって放射線量は一時に比べてはかなり低減しているが、原発事故前に比べるとやはり比較にならないほど高い。宅地が狭い所は庭を掘ってフレコンバッグを埋設して庭土などでカバーしてはいるが、庭先などでは何も知らない幼児らが家族の目を逃れて付近で遊び回っていることもあるようだ。このフレコンバック、なかには破損しているのも見かけるだけに子を持つ親ならまだまだ監視の目配りが必要だ。「保管期間は5年」と説明されたが、わが家の場合はあと1年。もし満了が過ぎて運もび出されないなら、環境省に抗議をするつもりだ。
 
▼再三のことだが、国や加害者の東京電力の対応に真剣さが微塵も感じられない。汚染土壌は原発が立地する大熊、双葉両町にまたがる約1600㌶の中間貯蔵施設に搬入するが、肝心の用地交渉が難航し、いまだに着手できないでいる。東京オリンピックから1年後の2021(平成33)年春までには用地の7割を取得出来る、としているが、ともかくスムーズな用地交渉に期待するしかない。福島空港約9個分の広大な貯蔵施設だけに用地交渉も苦戦を強いられているようだが、最終的には汚染土壌のほか放射性セシウム濃度がキロ当たり10万ベクレルを超える焼却灰も保管する。
 
▼使用開始から30年以内には福島県外の最終処分場に移すと決められたが、さすがにこの用地も建設場所さえ決まらずにいる。国は地下300~500㍍に埋設する方針だが、わが国は火山、地震が頻発する国土だけに反対論も根強い。そのためか、地元からは中間貯蔵施設が最終処分場になりかねないと、危惧する声が強まっている。残念ながらあきらめの声も漏れており、これだけは次代をつないで県民の総監視体制が求められる。【笑止千万】
                              (2016・3・29)

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