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コラム・筆は一本也

「複雑な思い」

東京電力福島第一原発事故からもうすぐ5年。福島第一原発1〜3号機がメルトダウンし、燃料デブリが再臨界する懸念があるという。昨日、NHKのBS1スペシャル「福島第一原発 廃炉への記録」を見て、再び暗たんたる思いにかられた。予定では東京五輪が開催された翌2021年にデブリの取り出しがスタートするという。デブリがどうなっているのか。その姿はいまだにとらえられていないという。福島の地にいて、過酷な現実は今も同居する。
 
▼原発事故を経て今も廃炉作業に携わる作業員には頭が下がる思いだが、いまだに続く東電の隠し事には空いた口がふさがらない。その東電は国の管理下にあるが、国もけっして口を挟もうとはしない。未曽有の事故をはなから軽視しているのだろうか。国を上げて英国など他国への原発輸出、そして原発再稼働など、現実にふたを締めてしまおうという姿勢が目立つ。それにしてもアンダーコントロールとはよく言ったものだ。
 
▼東電の隠ぺい体質は今に始まったわけではない。その根は古くてしたたかだ。隠ぺい工作も東電のみに限ったことではない。政財界、官公庁、それに大企業の多くが持ち合わせている。しかし、原発事故のような過酷事故で隠し事があり得るのは重大な刑事事件である。その一端が間もなく裁かれようとしている。少なくとも裁判が始まる前、被告となる東電幹部には被災地に足を運んでもらいたかった。
 
▼「被災地、被災者に寄り添って」。よく喧伝される言葉だ。それでもあえて福島の復興のために信じよう。「福島の復興は日本の復興」でもあるから。昨日のNHK日曜討論で出席者のひとりが言っていた。「長い時間軸での支援を」「災害は今も続いている」と。待ちわびた避難解除区域に帰郷する被災者たちもいる。複雑な思いでいつも見つめる。未曾有の危機は5年経った今も続いている。【笑止千万】
                          (2016・3・7)

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