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コラム・筆は一本也

「自然のしっぺ返し」

暖冬異変の続く中、福島・山形県境にある吾妻小富士(標高1,707㍍)にも異変が起きている。この時季だと、山頂から裾にかけて雪化粧しているのがいつもの景色だが、例年に比べると積雪量が少ないせいか、今年はほんの一部の薄化粧にとどまっている。吾妻小富士は、登山道入り口の下を通る磐梯吾妻スカイラインからだと比較的簡単に登れる山だ。山頂にはすり鉢状の大きな火口があり、その形が小型の富士山のように見えることからも「福島の小富士」とも呼ばれている。
 
▼春先になると、山の東斜面にはウサギの形をした残雪が見られる。山肌の雪解けが進んでウサギの形のように見えることから、最近は「雪うさぎ」とも紹介されるが、正しくは「種まきうさぎ」。種まきうさぎが表れると福島市内や県北地方では農作業も本格化する。種まきうさぎを春耕の目安にしている農家は今も多い。ところがこの冬は、種まきうさぎも早々に姿を見せている。子どもに見せて聞いても、「あれってウサギなの」と答えてしまうほどの形ではあるが。
 
▼大寒波が到来し、里山や市街地にどか雪をもたらすと一気に姿を消す種まきうさぎだが、それでも暖かな初春の正月になりそうな予感に七十路入りの筆者も正直喜んでいる。一方では暖冬異変に悩むところも多い。県北地方では天然冷凍の凍み豆腐産地の福島市立子山、あんぽ柿の主産地の伊達市梁川や隣接の宮城県丸森町では出荷が滞り、悲鳴さえ出ている。天然に頼る生産者は寒波の到来こそが神頼みである。ゴルフ場はクローズしなくて助かるが、スキー場のオープンはかなり遅れており、悲喜こもごもの歳末を迎えそう。
 
▼最近の冬は温暖化の影響で暖かいかと思えば、忘れたころに大雪や豪雪に見舞われる。春を迎えても強風、竜巻などが襲い、次から次と異常気象が発生する。猛暑や酷暑はもう夏の定番ではなく、5月、6月ごろからやってくる。そして秋は豪雨と、しとやかな秋雨はとうに昔のことになってしまった。四季折々の日本の美も崩れてしまいそうで気が気でない。異常気象は人間の営みが最大の要因だが、少なくとも地球からしっぺ返しを受けないよう人は心がけたい。取り返しのつかない原発事故とて同じだろう。【天下泰平】
                (2015・12・20)
 




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