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コラム・筆は一本也

「無粋な月見」

秋の訪れを告げるように美しく輝いた十五夜からおよそ1カ月。今宵25日は旧暦の十三夜。中秋の名月を愛でたら十三夜の月を愛でないと片見月として忌み嫌われる―という風習が伝わる。一説によると、この二つの月見は男女が一緒に見る約束を交わす恋愛の約束事だったとも言われている。一人寂しく眺めるよりは家族そろって、あるいは恋人同士で眺めた方が合っているような気がする。それにしても十五夜に比べると世人の意気込みも少ない感じがする。
 
▼例えばスーパーの宣伝。十五夜には特設コーナーなどで月見セットなどを特売していたが、十三夜になるとぐっと穏やか。チラシの隅に紹介されるか、店内にチラシが張り出されている程度である。忌み嫌われるとされる片見月の風習も今はそれほど関係ないのか。ともかくだんだんに風習が薄れているのを実感させられる。さて、作柄が「やや良」で、しかも全品種の平均で1等級が90%をはるかに超えている福島県産の水稲。ほぼ刈り取りも終わり、実りの秋も本番を迎えた。
 
▼収穫の秋の今宵の月見だが、月にはそれぞれ和名があるという。月齢1は見えないものの新月、2は二日月、月齢3は三日月。十日月や月齢30の「つごもり」などロマンチックな名前が付けられているものもある。馴染み深い名前を紹介すれば、十三夜、14日の待宵月、十六夜、立待月、月の出を寝て待つ寝待月、月齢20の更待月など、月を愛でた昔人のロマンチックさには感動する。団子13個のほかに栗や豆などを供える十三夜の月見は日本独自の風習。平安時代に中国から伝わった十五夜の宴とは異なり、こうした風習はぜひとも継承したいものだ。
 
▼中国と言えば、このところわが国と同盟を結ぶ米国とは日に日に緊張状態にあるようだ。米ソ冷戦時代にデタント(緊張緩和)という言葉がもてはやされたが、その歴史を繰り返すのか世界は再び緊張緩和を求める時代に入ったようだ。それで日本はどう転ぶのか。TPP、原発再稼働、安保法制、沖縄の基地問題どれをとっても米国の肝入りであり、両国は密接不可分の関係でもある。かつてのような頭ごなし外交でハシゴを外されるようなことにならなければよいが…と考えたくもなる。花鳥風月の一つである月見の趣にはほど遠い話になってきた。【無粋千万】
                          (2015・10・25

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