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コラム・筆は一本也

「衆寡敵せず」

最高気温が連日30度を超える猛暑続きの福島市だが、きょうは最高予想気温が何と38度らしい。熱中症にはくれぐれも注意したい。今ほどエアコンが普及していなかったころ、うだるような暑さの福島市に数年暮した経験がある。もっぱら扇風機で涼を求めていたが、それが涼風ではなく温風が体にまとわりついたことを思い出す。すり鉢の底にあるような地形の福島市街。熱帯夜などはその底辺に暖気がたまり、びくとも動かない。福島の夏の暑さは全国指折りであり、冬ともなれば今度は厳しい冬将軍が待ち構える。
 
▼同じ福島県でも、夏涼しく冬暖かい海沿いの浜通りと、中通り、会津地方とはまるで気候が違う。浜通りに長年暮していた人たちが、原発事故により避難者となって彼の地に暮すにはそれなりの覚悟がいる。仮設暮らしの避難者たちにとっては二重、三重の塗炭の苦しみと言っても過言ではないだろう。そんな状況もわからず、福島入りしては「被災者に寄り添う」などと言っても、底は見抜かれるわけである。安保法案、いわゆる戦争法案をめぐって、マスコミの世論調査では安倍政権の支持率、不支持率がついに逆転した。上げ潮だった株も一気に下がりそうな気配である。
 
▼暑い夏と言えば、いよいよ夏祭りが本番を迎える。血沸き肉躍るニッポンの祭りは、普段おとなしい日本人たちが見違えるように活気づく場でもある。よりおとなしいと言われる東北人ならなおさらである。各地で行われるエネルギッシュな夏祭り。そんなエネルギーを少しでも被災者の人たちに分けてあげたいと願わずにはいられない。その土地に溶け込んでの祭りもいいし、またはオラが故郷の祭りを披露するのもいい。祭りに特別の言葉はいらない。一心同体にみんなで楽しめばいいと思う。
 
▼先日、福島県会津美里町で御田植祭があった。獅子追いの仮面を付けて町外れの御田神社境内の神田に入り裸足で踏み荒らす「田荒らし」は圧巻だ。ついでに国民が反対する戦争法案なるものを裸足で踏みつけてはどうだろうか。国民の声であり、本音でもあろう。新国立競技場、安保法制でも、有識者とは名ばかりの似非(えせ)有識者なる群れが大手を振っているようである。それに同調し、ダンマリを決め込むマスコミ、メディアもあるという。明治期のジャーナリストで文筆家の斎藤緑雨がこんな言葉を残している。「按ずるに筆は一本也、箸は二本也。衆寡敵せずと知るべし」と。【真実一路】
               (2015・7・14)

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