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コラム・筆は一本也

「一喜一憂の暮らし」

何事も早ければ良いというものではないが、大事にかかわることなら遅いよりははるかにましだ。自明であり、むしろ遅ければ罪つくりだろう。4年前の東京電力福島第一原発の爆発事故以降、福島県内では住宅地周辺や生活道路などの除染作業が各地で進められている。拙宅周辺でも4年余りが経過してようやく除染が始まった。まさしく遅過ぎた除染である。ところで本県の河川の堆積物から高濃度のセシウム137が検出、稲作農家などに衝撃を投げかけている。東京農工大の分析で明らかになり、6月20日の日本環境学会で公表された。
 
▼福島県内の避難区域では依然として作付けが制限されている場所もあり、今回の調査で政府が目論んでいる早期帰還の課題が浮き彫りになった。東京農工大は2000年から3年間にわたり阿武隈川の二本松市を中心とした35地点で春秋の年2回、川岸の堆積物を採取してセシウム137の分析を実施してきた。セシウム137は半減期が2年とされる134に比べて30年と長く、住環境に悪影響を与え続ける曲者だ。放射能汚染は数値的に差があるものの、北海道から九州の一部にも飛散し、原発事故の悲惨さを示している。
 
▼東京農工大によると、全35地点の平均値は春の調査時点で2000年がキロ当たり1450ベクレル、01年は2700ベクレル、02年は1080ベクレル。これに対して、秋では01年は451ベクレル、02年は60ベクレルと低くなる。それにしても最高値は01年春の2万2千800ベクレルというから想像以上の汚染だ。秋に低下するのは秋冬に落ちた枯れ葉や小動物の死骸などが雪解け水や梅雨時の雨などで下流に押し流されるのが要因としている。一級河川の阿武隈川に限らず、水田には中小河川や山々から流れ落ちる沢水などを利用している。
 
▼こうして考えると、水田にも放射能が濃縮されている可能性があるということになる。「汚染濃度は基準値以下。作付けしても大丈夫」と言われても、農家はもちろんだが消費者の納得は得難い。現に流通ルートに乗っても福島産だけで買いたたかれるのが現実。気になることに川釣りのこともある。解禁されたアユもそうだが、週末ともなると各地の河川で釣りを楽しむ光景を見る。福島市の大半の浄水は摺上ダムから引かれているが、かつては市街の渡利浄水場で阿武隈川の水を利用していた。さて、一喜一憂の暮らしはこれからも続く。【平々凡々】
                (2015・7・3)

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