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コラム・筆は一本也

「宇宙人が見る光景」

きのうの新聞の歌壇欄にこんな作句があった。「戦場の村過ぐるごと野に庭に堡塁のごとき汚染土の見ゆ」。東日本震災・福島原発事故以降、今では見慣れた福島県の一風景でもある。福島市と川俣町を結ぶ国道114号線。全域が避難地域となっている川俣町山木屋を通り浪江町に抜ける主要道だが、原発の爆発事故が撒き散らした放射性物質の除染作業の大型車で混み合う道路でもある。貸し家難から福島市から通っている作業員も多く、さながら「危険国道」とも言われている。
 
▼国道沿いの福島市飯野町に住む小学生の姉弟が震災直後、行方不明者の捜索に浜通りの海岸地帯に向かう他県から派遣の警察官に横断幕を手に激励と感謝の意を伝え続けたことがマスコミに取り上げられ、大きな反響を呼んだたことがあった。そうした心温まる姉弟の行為が、周辺のUFOの里・千貫森のPRにも少なからずひと役買った。その飯野町を車で走っていると、UFOの里の看板があちこちに立てられている。震災前からまちのPRやまちおこしとして地元の商工会などが宣伝にはひと際力を入れてきた。
 
▼飯野町と言えば、東北電力の水力発電所に水を送る飯野堰堤が有名だ。とりわけ阿武隈川沿いに二本松市東和町まで続く桜並木は絶景。桜の節や紅葉の時期には児童たちの遠足や花見客でにぎわいを見せる。「UFOの基地」と地元で呼ばれている千貫森は標高約460㍍の山だが、山頂も広く眺めも良い。千貫森城跡もあり、福島市はもとより、吾妻連峰や安達太良連峰、那須連峰の一部も眺望できる。なぜUFO基地と呼ばれるようになったかと言えば、近くに住む若者が上空を飛ぶUFOらしき物体を目撃したことに起因するらしい。
 
▼おもしろいことに登山道の数カ所にユニークな宇宙人の石像がある。この石像は街中でも見られ、地域の熱の入れようを感じさせる。さて、未確認飛行物体の目撃話は世界中あちこちにあるが、そうした宇宙人の存在を声高に唱える学者や専門家も多い。地元では千貫森に宇宙人が現れるのを、首を長くして待っているという。肝心の宇宙人だが、遅々として進まぬ除染、廃炉の復旧復興作業の様子を上空から眺め、降り立つのを躊躇しているのかも知れない。あす24日は「UFOの日」とのこと。【平々凡々】
                    (2015・6・23)

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