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コラム・筆は一本也

「内地とのかい離」

沖縄には「ヤマトンチュウ」と言う言葉がある。沖縄以外の日本国、いわゆる内地の大和人を指すらしい。東京で下宿生活を送っていた大学生時代、隣の部屋に沖縄の離島出身の学生がいた。打ち解けて酒を酌み交わすようになり、互いの故郷の話にも及んだ。そこで「東北には差別される土壌がある」と言ったようなことを話したが、間髪入れず「そんなことは差別にも当たらない」と返されたのを今も覚えている。その場では釈然としなかったが、琉球・沖縄の苦難の歴史を知るにつけ、40年を経た今にしてよくわかるようになった。
 
▼「米国の属国化」と揶揄される安倍政権の沖縄振興施策。普天間の米軍施設の辺野古移設を巡って閣僚ともども口にするのが危険性回避。おかしなことに普天間だけが危険地帯と力説しているが、これでは沖縄県民を愚弄してはいないか。普天間飛行場の辺野古移設に関し安倍政権が軽視する態度を印象づけたのが、まず翁長知事が当選した昨年暮れの対応。知事サイドの面会要請を首相はじめ官房長官、防衛相がそろって門前払い。挙げくに沖縄振興予算の一部削減などをちらつかせながら移設への合意を働きかけていた。
 
▼一方の翁長知事だが、移設反対を最大公約に掲げて選挙戦を戦った姿勢は今も変わらず、首相や連休明けの防衛相との会談でも物別れに終わった。危険性の除去が原点とする政権側の移設理由は、無意味に近い戯言と受け止められているのを政権側自らが知らないことはないはずだ。15日で沖縄が本土復帰して43年を迎えた。この間、長年の米国の施政下で県民生活の向上が遅れ、さまざまな面で振興策が必要だ。沖縄県は県土の約7割が在日米軍の専用施設という異常さであり、まずこれらの解決に手をつけなければならない。
 
▼たとえ米軍が撤退したとしても、今度は米軍頼みの地元経済が疲弊すること必至。ある意味で原発で成り立つ地元経済と同じかもしれない。これらをどう解決し、政治決着させていくのか。戦後70年、本土復帰から43年を経た今も、沖縄の隷属は何ら変わらない。移設先の辺野古でも、そして県土全体においても危険にさらされているわけだから、知事が頑までに拒否の姿勢を見せるのは当然だ。また県民の総意でもある。溝が埋まる兆しが見えないが、安保法案とともに今国会での重要案件であることには違いない。【千里万里】
                  (2015・5・16)
 

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