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コラム・筆は一本也

「覚悟の営み」

観光地にとって書き入れ時のゴールデンウイーク(GW)も、相次ぐアクシデントに見舞われ、行楽客や関係者にとってはハプニングの多い連休となったようだ。箱根・大涌谷の温泉施設で蒸気が勢いよく噴出しているのが確認され、小規模噴火の恐れもあるとして大涌谷周辺は立ち入り禁止。箱根ロープウェイは全線運休となり、周辺の遊歩道も閉鎖された。宮城、山形両県にまたがる蔵王では、噴火活動の活発化で通り抜けが規制。片や阿蘇山においては20年ぶりの火山性の震度が観測された。
 
▼悪いことは重なるもので、被災地福島県も例外ではなかった。福島市と会津地方を結ぶ観光道路・吾妻スカイラインが火山性有毒ガスの影響で全面通行止めを食らってしまった。まさしく自然の“怒り”が一気に噴き出した連休でもあった。地震、火山など自然の猛威にあらがうことは出来ないが、それでも火の国のわれわれはそうした事とともに長きにわたり生活を営んできた。それなのにあちらこちらで無責任な風評が蔓延するのは残念至極だ。
 
▼危険だと思う気持ちは分かるが、無為な警戒心は風評につながる。それなら蒸気漂う温泉地などはとても行けないはず。のんびり温泉につかる暇もなく、いつどこで天災が起きるか絶えず警戒していなくてはならない。火山活動は地震も引き起こす場合が大半だが、そうしたことは承知の上での営みであるからあきらめもつく。しかし、原発事故による放射性物質の拡散が要因では納得できない。それなのに風評に拍車をかけるようにセシウムを含んだ福島の土をいれた「ドローン」を首相官邸屋上への落下させた不届き者もいた。
 
▼放射性物質=福島県を印象づける風評だけでなく、県内の旅館、ホテルにとってはまた深刻なことがある。いわき市の例だが、団体旅行の申し込みが舞い込んでも空き部屋がない状態が続いている。除染作業や復旧、復興にあたっている人たちが長期宿泊していることで、予約もままならない状況。これでは常磐道全線開通や常磐線の品川乗り入れなどのメリットも生かされない。ともかく、ビジネスホテルなどは全部屋の7~8割が作業員の宿泊で埋まっており、打つ手がない状態という。
 
▼福島市の飯坂温泉でも、復興作業員や応援の警察官、役所の支援職員などで団体客の受け入れにブレーキを掛けているようだ。復旧復興の仕事が最優先か、それとも行楽か。各々の関係者に悩ましいとところ。せっかくの書き入れ時も原発事故が足を引っ張っており、未曽有の災害が福島県民の生活に重苦しくのしかかっていることだけは違いない。この連休も多くのボランティアたちが被災地に向かった。風評を伝播するのではなく、まずは行ってみて自分の目で確かめることは大事だと思う。【平々凡々】
                  (2015・5・9)

 

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