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コラム・筆は一本也

「被災地からの宣言」

福島県南相馬市が原子力に依存しない街づくりに取り組み始めたのは2012年10月。震災・原発事故から約1年半後だった。再生可能エネルギー推進ビジョンを策定し、「省エネルギーの推進」「再生可能エネルギーの積極的利用」「スマートコミュニティの構築」の3つの基本方針を掲げた。原子力に依存する状況から脱却するため、再エネの導入目標も明確に設定。2030年に自給率100%を目指し、中間点の20年に64%まで引き上げるための施策を示した。その南相馬市が今年3月、全国の自治体のトップを切って「脱原発宣言」を行った。
 
▼被災地からのこうした取り組みだが、育ちつつある芽を摘み取ってはならない。国の肝いりで進めた太陽光発電も、全量固定価格買い取り制度(FIT)をめぐっては再エネに冷や水浴びせる電力会社の契約中断もあった。原発に頼らない街づくりを目指す南相馬市のような自治体や地域を手厚く支援する仕組みは何よりも緊要だ。よく休耕田や荒れ果てた畑などで太陽光発電所を見かける。マイホームの新築にあわせて太陽光パネルを取り付ける家々も多くなった。紆余曲折はあっても、震災以降に再エネへの取り組みは一気に高まった。
 
▼脱原発を目指した市民太陽光発電所が川崎市に建設されたという話をニュースで知った。市民が全額出資して設立したNPO法人「原発ゼロ市民共同かわさき発電所」だ。マンション屋上に出力25㌔ワットのソーラーパネルを設置し、今年2月末から売電を始めている。設置費用は800万円という。国の原発をベースロード電源とするエネルギー基本計画に異を唱えたかのような取り組みだが、この「川崎方式」は全国的に広がる可能性を持っている。全国の自治体、地域がノウハウや情報を提供し合い、結びつきを強めるのもわるくない。
 
▼エネルギー研究所などの見通しによると、化石燃料だけではなく原発に必要なウランもあと90年前後で枯渇するとのデータもある。そこで急きょ、ウランに替わるプルトニウムやMOX燃料を高速増殖炉で使用してプルトニウムをーという核燃料サイクル計画。ところがこの計画、再処理工場や高速増殖炉もいまだ実用化されていない。そこまでしても原発によるエネルギーに頼りたい気持ちは測りかねる。わが国に比べはるかに地震の少ないドイツやイタリアなどの国々で脱原発が進んでいるのも不思議な感じがする。【虚々実々】
                  (2015・4・26)

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