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コラム・筆は一本也

「恵方巻に願掛け」

朝晴れていたかと思えば、あっという間に鉛色の空になり、西の山からは雪が横殴りに吹雪いてくる。1月から2月にかけての厳しい寒さはことのほか苦手である。きょうは大寒。24節気の最後となる節気であり、一年で最も寒さが身にしみる時節だ。その大寒が過ぎれば節分や立春。かつては立春が一年の始まりであり、節分は大晦日。豆まきで邪気を払い、より良い一年を願う年越しの民俗行事だった。この季節は、寒い日が三日続いた後は暖かい日が四日続くと言われる三寒四温でもある。そして近づく春には心も躍る。
 
▼今年の大寒は「二十日正月」と重なり、地方によっては今も正月の祝い納めの日としているところも多い。二十日正月には出世魚でもある鰤(ブリ)を食するのが定番だ。大寒あたりになると雑草も芽をのぞかせるが、なんといっても待ち遠しいのはフキノトウだろう。名残雪の間から顔をのぞかせるため、「春の使者」とも呼ばれる。つぼみは天ぷらにしてよし。晩酌のつまみにももってこいだ。産地直売所などでは開店早々に売り切れる人気食材でもある。苦々しい味には春を彷彿させる、という通もいる。
 
▼大寒から二週間後は節分。節分は豆まきだけでなく、恵方巻きもなかなかの人気のよう。恵方巻きを食べる習慣は関西方面から伝わり、東北地方でもスーパーやコンビニなどの予約のチラシが盛んに舞い込むようになった。今や人気一番といったところか。その恵方巻きのご利益だが、今年は西南西の方向が恵方らしい。家族そろって太巻きを口にする光景は滑稽な感じがしないでもない。筆者などはいつも食卓からはみ出す。一年の幸せを願うのは良いが、どうもこの珍事には苦笑する。
 
▼ひと言もしゃべらずに黙々とパクリつく光景はやはりおかしいし、つい笑ってしまう。それだから実ははみ出すのではなく、外れるわけである。ともかく、祈りや願掛けなどの行事が引き継がれるのは喜ばしいことであり、季節を慈しむ日本人の実直さを感じる。さて、トンネルをくぐれば春は駆け足でやってくる。ただし、福島県はとてつもなく長いトンネルが続く。長いトンネル抜け出すためにも駆け足で復旧復興を進めてもらいたいし、中間貯蔵施設の整備が遅れて搬入開始が延期されるなどの事態はもってのほか。豆まきで退治したい気分だ。【怒髪天王】
                  (2015・1・20)
 

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