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コラム・筆は一本也

「県産果物のあれこれ」

全国有数の果樹産地としても知られる福島県は、モモ、ナシなどの果物が有名だが、4年前の東京電力福島第一原発事故による放射線への不安から価格は大幅に下落した。価格は現在、事故前の水準に戻ったというが、贈答品などはまだまだ風評被害が残るという。福島市西部の果樹園地帯を走る「フルーツライン」沿道の果樹畑では、降り積もった雪の中で早くも剪定作業が始まった。風評被害で売り上げや値崩れに泣かされ続けている果樹農家は今年に賭ける思いも強く、なによりも風評払拭が果樹王国復活のカギを握る。
 
▼ふるさと福島は昨秋もさまざまな秋の味覚にあふれた。なかでも採りたての果物はみずみずしく実においしい。食し方もいろいろあるようだ。思い切って食べ方のイロハを栽培農家の人に尋ねてみた。四文字成句にはなるほどと思える示唆に富んだ言葉が多いが、果物の食べ方にも四文字成句があるとはまったく知らなかった。その四文字は「梨尻柿頭」。ナシは枝側より尻側の方に甘みがあり、逆にカキは頭側から食するとおいしさも請け合いという。ナシなら「幸水」や「新水」「二十世紀」「長十郎」と数種類があるが、すべてそうらしい。
 
▼ナシは便秘の解消に効果があるという。シャリシャリとした食感は石細胞によるものらしく、腸を刺激するためにその効果のほどがあるらしい。昔から言われていたらしいが、そんな効用も知らずに果物好きということだけでひたすら食べていた。甘柿も店頭に勢ぞろいしているが、福島県産の一部のカキはセシウム含有量が基準値を上回るためか、他県産に取って代わられている。カキだけではなく、リンゴやブドウも他県産に押されているらしい。県産もので育ったわが身としては、何ともやるせない思いだ。
 
▼秋になると、ナシ狩りと並んでブドウ狩りも人気を呼ぶ。福島市のフルーツライン沿いの果樹園は、ようやく観光客が戻り、風評被害もやや薄らいできたような気がする。蘊蓄(うんちく)に戻るが、「ブドウを選ぶ時には皮の表面にブルームという白い粉が付いているものが上質で味がよい」と、果樹農家の若夫婦から教えてもいらった。試食もさせてもらったが、はっきりとその差がわかった。求めるなら、やはりおいしいのに決まっている。あれやこれやと恥を承知のうえで聞いてみるのも食通への一歩かも知れない。寒の入り、もう秋が待ち遠しい。【食道楽坊】
                  (2015・1・8)

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