経済優先の掛け声に躍らされた師走の総選挙狂想曲。実際、「原発」は争点の端にもかからず、短期決戦の衆院選は大方の予想通り、自民・公明両党の連立政権の圧勝に終わった。野党第一党の民主は議席を11増やしたものの、代表の海江田氏が比例での復活当選もならずに落選、代表辞任へと追い込まれた。被災地・福島県では、調整難から比例近畿に回った自民前職が落選、5区の民主前職が小選挙区で敗れるなど少々波乱に富んだ選挙戦だった。しかし、原発問題は忘れられたかのような静かな戦いでもあった。

 

▼3年9カ月前、未曾有の大震災が起き、続く原発事故を引き起こし、日本経済は麻痺したかのようだった。ライフラインが寸断し、実体経済そのものがパニックに陥った。原発事故の影響は日本経済と密接不可分だった。そうした意味を示唆した経済優先なら分かるが、重要素を置き去りにした経済優先とは何なのかを考える余裕さえも与えられなかった今選挙。安倍政権によって原発再稼働、集団的自衛権、特定秘密保護法とあれよ、あれよと進むだろうが、民主政治とはいったい何なのかこれから切実に問われることになるだろう。

 

▼ともかく、今回の総選挙でアベノミクスを旗印にした安倍政権が議席数で国民の大きな信任を得た。憲法改正の発議も可能となり、一気に憲法改正や安全保障法制化などが一層加速するだろう。デフレ脱却や円安対策が当面の課題となるが、円安は中小企業の原材料高騰や家計を直撃しているだけに、このまま放置しておくことはできない。一刻も早く対策を打ち出す必要がある。迫るTPP交渉に加え、農業問題、電力自由化など構造改革も待ったなしだ。
 

 ▼自民党は原発再稼働、エネルギー確保手段としての原発再稼働、原発輸出を公言しており、今後大きな火ダネとなる危険性をはらんでいる。画餅のような安全を確保したとして、平気で原発を進める「異次元の政策」が第２、第３の原発事故を引き起こす危険性も十分に考えられるのではないか。一度で懲りない面々がこの国の操縦桿を握っている恐ろしさ感じてしまう。当然のように解決手段もない汚染水の海洋放出といった現実問題は完全に無視された形だ。

 

▼未だに12万人も近くがふるさと福島を追われ全国各地に避難していることを思うとあまりにも悲しく、不平等な仕打ちには怒髪天を衝く。少なくとも地元選出の国会議員には、被災地の一日も早い復旧復興を働きかけ、安住できるふるさとの再興に力を尽くしてほしい。「フォー・ザ・フクシマ」を永田町の合い言葉にするくらいの気構えで体当たりし、県民に誇示すべきではないか。【天下泰平】

　　　　　　　　　　　　　　　　　（2014・12・15）