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コラム・筆は一本也

「40年の夢」

かつて「原発銀座」と言われた福島県双葉地方だが、1960〜70年代にかけて東京電力福島第一原発(1号〜6号機)、そして70年代〜80年代にかけては同第二原発(1号〜4号機)が次々と建設された。「原子力は夢のエネルギー」と宣伝され、「原発マネー」で立地町と周辺自治体は確かに潤った。40数年にわたり、夢のエネルギーがもたらすその恩恵に授かった結果、恩恵に浴した地は今や人が住めないゴーストタウンになってしまった。
 
▼有り体に言えば、確かに人はお金がほしい。豊かな暮らしを送りたいと多くの人が思うはず。身の危険などのリスクがなければなおさらだろう。「わが国の原発は万が一にも危険はまずない」と電力会社はじめ、国、地元自治体は長年にわたって言い続けてきた。それがまるっきりの無責任発言であり、ウソだとわかったのはついこの間。そんなことも忘れたかのように、ただただ金にありつく。原発再稼働とは、またしてもエネルギー事情というウソの言質に隠れた、要するに金策のようなものである。
 
▼史上最悪と言われた原発の爆発事故から3年8カ月。すでに被災者の怒りさえも鎮静化しているように感じる。これに反して風評は一向に収まる気配も見えず、加害者の東電も「平静」に戻ったような錯覚を禁じ得ない。いや、東電の場合は平静さを装っているのかも知れないが、いずれにしてもしたたかさを感じるのは多くの県民が思うことだろう。先月行われた福島県知事選でも脱原発は争点にもならず、腰砕けの政策論争となってしまった。
 
▼昭和40年代、かつて福島のチベットとも言われた地域が急速に発展し、雇用の場が生まれ、所得も向上した。「原発サマサマ」のはやり言葉も現れた。「神様、仏様、原発様」とはしゃぐ時代もあったことも事実。隣県の宮城では原発事故で発生した指定廃棄物の最終処分場を巡り、3候補地のうちのある町では調査作業に入れなかった。地元住民だけでなく町長自ら抗議行動に打って出る一幕もあった。とにもかくにも他県などで反原発闘争がニュースになるたびに福島県民としては心が痛切に痛む。【平々凡々】
                                  (2014・11・11)

          

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