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コラム・筆は一本也

「自然と日本人」

そろそろ初霜となる時季だが、きょう10月23日は「霜降」。これまでの露が霜に変わるころを表す節気だ。寒露から15日後でいよいよ寒気を感じる季節になる。紅葉前線の南下も足を速め、平野部でもみごとな紅葉を見るようになった。時を同じく味覚の秋でもあるが、肉の赤身に白い脂身が網目状見える「霜降り」を連想させる節気でもある。堪らず、肉汁が滴るようなステーキを食したくなる。精を蓄えて冬ごもりするにはちと早すぎるようでもある。
 
▼野山の装いに合わせ、奥ゆかしい表現がある。例えば、春は季語でもなじみの「山笑う」、夏は「山滴る」(やましたたる)、冬は「山眠る」、そして秋は「山装う」と、まさに美観紅葉を表現している。いずれもなるほどと納得する表現だが、先人たちの研ぎ澄まされた感覚にあらためて承服、感心する。霜降を迎えると、風も霜風と言って寒さを増してくる。重ね着で過ごす日々となるが、農家にとっての霜対策も急務だ。
 
▼霜の害を防ぐための霜囲いがある。野菜などをワラで覆った光景は本格的な冬の訪れを感じさせる風物詩でもある。「今日は霜夜だ」などと、寒い夜に備えた身繕いを始めたりするころでもある。陰暦11月の異称が霜月とはこれまたぴったしの呼称。あまり見かけなくなったが、外遊びする子らには常に霜焼けがつきものだった。一年の季節を彩る最後のステージとなる紅葉。燃えるような全山の赤、黄、そして枯れ野に姿を変えて白銀の冬へと移ろう。
 
▼こうした四季を感じながら、日本人は自然の営みに抱かれて1年という一生を過ごす。百年生きても、それは同じ1年なのかもしれない。そんな風趣あふれる国・地域はなかなかないだろう。さて昨日、都内で地域金融機関など主催の脱原発社会を目指した地域再生エネルギーシンポジウムが開催され、取材した。豊かな故郷の自然を生かした新しいエネルギーによる地域づくりが各地の信用金庫関係者らによって提案された。地域・国づくりの姿勢が、今の政権とはだいぶ違ったようだ。【天下泰平】
                    (2014・10・23)

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