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コラム・筆は一本也

「白日の下に晒す」

めっきりと涼しさを増してきた朝夕だが、やはりこの涼感は中秋の候をひと際実感させてくれる。それも県土の広い福島県は、福島や会津若松、喜多方市などではまだ夏日が続く。「暑さ寒さも彼岸まで」とは言うが、秋の彼岸の時期までは残暑が続くのが慣わしなのかも知れない。秋を感じさせてくれるひとつに雲の存在がある。一面に広がるうろこ雲や羊雲は、和らぐ日差しとともに秋の郷愁を誘う。辺りを見れば、宅地の庭木も紫陽花(アジサイ)から百日紅(サルスベリ)へと主役交代し、さらに銀杏(イチョウ)の葉も黄身を一段と増してきた。
 
▼今年の異常気象にもめげず、水稲は「やや良」だから、とりあえずは豊作といっていいだろう。梅雨時の瑞々しい緑の苗も、実るほどに頭を垂れて光輝の黄金色へと近づいてきた。その瑞穂の国の稲作だが、これからの聖域なき関税交渉・TPPの着地点が気になる。それでも、稲作農家の人たちや田んぼの番人、案山子(かかし)の表情は何にも増して明るさを感じる。純農村地帯に一面に広がる稲穂はまさに黄金の国を象徴し、その景色にはあらためて安らぎを覚える。
 
▼福島県の真ん中寄りにある城下町・二本松市。この地方ではすでに早稲種が出荷されている。もちろん厳しい放射能検査をパスしての出荷だが、全量未検出で難なくクリア。その安全度を十分に証明している。二重、三重の厳しい検査を経てから出荷されるが、原発周辺地区ではいまだに高い数値が検出。懸命の試作を重ねるも、耕作放棄地は後を絶たない。あれから3年半、農業県の復興はまだ道半ばである。思うにつけ、原発事故は人を引き裂き、疑心暗鬼を深め、福島県を分断させてしまった。罪深き事この上ない。
 
▼罪深いと言えば、福島原発の「吉田調書」、慰安婦問題で虚偽報道を冒した朝日新聞の今朝の紙面は一面にわたって謝罪と訂正記事で塗りつぶされていた。地方紙勤務時代、都合の悪い訂正記事は紙面の片隅に目立たぬように扱ってきたが、今回の異例の扱いには正直驚いた。ことの是非はともかく、経験から言わせてもらえば、先入観念、決め撃ちには大きな罠が待っている。特ダネ(特報)と誤報は紙一重である。朝日新聞を検証している識者がコメントしていた。「朝日だけの問題ではない」。他山の石とし、白日の下に「内情」を公にする社がいくつあるだろうか。【正々堂々】
                  (2014・9・12)

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