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コラム・筆は一本也

「戒石銘を肝に」

放射能物質の汚染土などを保管する中間貯蔵施設は、爆発事故があった東京電力福島第一原発周辺に建設されることになった。だが、あくまでも中間貯蔵であり、最終処分場ではもちろんない。はたして30年後はどういった形で決着が図れるのか。残念だが、今は問題の先送りしか方法がないのが現状だ。ともかく、中間貯蔵施設は国や福島県の交付金が決め手となり、大熊、双葉両町とともに建設を受け入れることでようやく決着する見通しとなった。
 
▼この中間貯蔵施設をめぐっては、肝心の用地の買い上げ価格の詰めの作業などが残っているが、これまで優柔不断と評されていた県が早期の決着にハンドルを切ったことが両町の決断を後押ししたことも付け加えたい。中間貯蔵施設については用地の買い上げ価格や貸借方式、最長30年の明文化などの幾つかのハードルがあり、国と県、そして両町の思惑が複雑に絡み合って難航を極めた。一連の国の説得作業の過程では石原環境大臣の「最後は金目~」の発言をめぐる地元の反発もあり、県と地元首長の最終決断を遅らせる要因ともなった。

▼最終的に国は30年間で総額3010億円の交付金を明示、県も生活再建として独自に150億円の支援策を打ち出し、ようやく決着にこぎつけた。10月9日に告示される任期満了に伴う知事選を前に早期決着を模索していた佐藤知事だが、中間貯蔵施設の受け入れと引き換える形での3選出馬を事実上断念せざるを得ない選択を迫られた。ともかく、受け入れにより県内に散在している一時保管の汚染土壌などは中間貯蔵施設に移送されることになる。
 
▼正直な話、補償では金目の話がついて回るのは当たり前である。それを担当大臣がわざわざ、「金目」の表現でもって口にすべきではないと心得てほしい。原発被災者への賠償金や農畜産物、事業者への損害賠償や補償金は、もともと国の政策と東電の管理の過ちから起きたものである。すげ替えるような発言はやはり言語道断である。維新の二本松少年隊の悲劇で知られる福島県二本松市には、旧二本松藩の「戒石銘」の石碑がある。碑文の意は「お前のいただく俸禄は人民の汗であり、脂である。下民は虐げやすいが上天を欺くことはできない」。【戒石銘碑】
                     (2014・9・1)

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