「実効線量」という用語がある。文献では、人体が放射線を受けたときの影響は、放射線の種類と性質、人体の組織や臓器によって異なるという。これらを考慮して放射線量を算出したのが実効線量。そうした実効線量は放射線の被ばく管理に用いられるが、組織や臓器ごとに吸収線量×放射線荷重係数×組織荷重係数を計算し、全身について合計した線量を指すという。一見わかったような気もするが、筆者にははなはだ理解不可能。東京電力福島第一原発事故以来、福島県周辺の被災者だけでなく、多くの国民を不安に陥れている問題だ。

 ▼国は福島第一原発事故以降、空間放射線量毎時0・23マイクロシーベルトを目安に除染作業を進めてきたが、今ごろになって「政府の公式な目標を定めた文章にこの数値はない」としらを切った。遅々として進まない除染に関し、環境省大臣官房審議官が発した答弁だ。自治体によっては毎時0・23マイクロシーベルト（年間１㍉シーベルト）に固執すべきでないとするところもあるが、多くの市町村は0・23マイクロシーベルトを目安に除染を急いでいるのが現実である。あくまでも政府が目標としているのは年間の追加被曝線量を1㍉シーベルト以下に抑えること。

 ▼毎時0・23マイクロシーベルトは年間の1㍉シーベルトから弾き出した推計値であり、当然、除染地域を決める際の目安にもしている。今ごろになって姑息な手段を持ち出すのは許せないし、事に当たってがっぷりよつに組んで交渉に臨むような政治家は見当たらないのか。こうした姑息な手段を繰り出す官僚ではなおさら望むべくもない。セールスのプレゼンテーションよろしく口は達者だが、土壇場でどれだけの力量をみせられるか。最近は官僚よりも能弁な若手政治家が目立つようだが、そのついでに重量（軽量？）内閣にも注文をつけたい。

 ▼賠償金抑制のためか、政府はともかく早期帰還を促す。川内村の解除準備区域の解除話で住民が一様に拒否反応を示したのは当然の話。それほど帰還を進めたいのなら、環境省や東電の担当者は川内村はじめ周辺町村に移り住み、生活をともにするぐらいの「覚悟」を持つべきだ。「被災者に寄り添う」「現場主義で…」などと口では言うが、まずもって覚悟を示してほしい。さらについでながら、政治家、とりわけ今の内閣は不退転の覚悟を持って事に当たってほしい。国を守るという集団的自衛権もしかり。あとで話が違って不幸な目に遭うのは国民、被災者である。【一陽来復】

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2014・7・17）