沖縄電力を除いた、原発を持つ電力会社9社は今月26日、一斉に株主総会を開いた。「脱原発」を求めた株主提案だが、昨年に続いてことごとく否決。会社側は、発電コストの安さなど原発の利点を強調し、「原発再稼働がなければ経営が立ち行かぬ」がその理由だ。ところが、再稼働から稼働40年で廃炉にする場合、原発の発電コストは火力発電より割高になることが、専門家の分析でわかった。以前からも指摘されてきたことだが、廃炉作業や事故対策費を含めればコスト安の理屈はもはや通用しない。それなのに…である。

 ▼福島第一原発事故を引き起こした東京電力でも株主総会があり、柏崎刈羽原発（新潟）と、宙に浮いたままとなっている福島第二原発（1〜4号機、冷温停止中）の廃炉を求める株主提案があった。しかし、あっさりと否決。株主総会も特段問題がなければシャンシャン大会に終わるのだが、最近はコンプライアンスなどの問題で総会は大荒れとなるケースが多い。肝心の取締役選任の承認もある。その役員らの人事だが、「人事は50点で満点」と言い、評価される一方で酷評されることも多分にある。所詮、人ごと（人事）とも言う。

 ▼人間社会ならではの現象と言えそうだが、株主の介入のない幹部社員の人事では時折、好敵手を難しいポストに昇格させて失脚を狙うなどの妙技を演じるケースも間々ある。こうした手口を「位打ち」と言うが、似たような手立てに「まつり上げてハシゴを外す」という離れ技もある。昇格の喜びも束の間、何やら難題を突き付けられ、出来なければ不定期異動で飛ばされる。左遷、降格人事におびえ、サラリーマンはいつも戦々恐々の体。そうした性はもちろんモチベーションの低下にもつながる。

 ▼その昔、京で権勢を振るっていた木曽義仲は、後白河法皇から受けた官位で自分を見失い、終いには破滅してしまっている。こうした手口は政敵を追い落とす公家の典型的な策略だったらしい。階級社会での昇進レースは資本主義と同様、社会主義、共産主義の国でも常に付きまとう。浮き沈みは世の習いだが、それでも予想もしなかったような分不相応な二段、三段跳び人事にはくれぐれも心したい。周囲の羨望の的となり、とんだ仕打ちが待っているかもしれない。ご用心あれ。

 ▼ともかく「七転び八起き」で、職責を果たしてゴールインする人もいる。たとえ、ハシゴを外されてもいつかは海路の日和で支援の手が差し伸べられることもある。苦労人ほど世情に通じるという精神面の強さもある。せっかくのポストならやるだけやるーの心意気でまっさらな気持ちで難関を突破してほしい。東電社員にも踏ん張って欲しいが、やる気の起きるような人事が果たしてこの先あるのかどうか。目の前の数字もさることながら、将来設計（計算）もしっかりやってほしい。割を食うのは原発被災者だけとなってしまう。【公明正大】

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2014・6・28）