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コラム・筆は一本也

「複雑怪奇な時鳥」

持病を持つ人が季節の変わり目を敏感に感じて天気をよく当てると言われる。低気圧が近づくと、不快指数が高じ、鬱陶しい梅雨入りを予想してしまう。夏日、真夏日が続く福島県内も、気象庁の予想通り梅雨入りが遅れるのかどうか、何とも気になる。気象庁が発表した6〜8月の天候予報によると、エルニーニョ現象の影響で、東日本の気温は平年並み、西日本は高め、北日本は冷夏になる恐れがあるとの見通しだという。梅雨入り全国的には遅れ、降水量は6月が少なめ、7月に多くなるとのこと。
 
▼田植えを終えたばかりの水田にはまだ水が張り、青々と育つ水稲が活気をみなぎらせる。しかし、梅雨入りが遅れ、挙げ句の果てに空梅雨ともなれば今度は水不足が心配。立ち枯れが発生するなど凶作を招く恐れもある。遠い昔は、今のようにほ場整備による水路も整備されず、それこそ「我田引水」の四文字が生まれた。今でも山あいの水田ではまずは我が田に水を引くという水の引き合いがみられる。そんな疲弊した地域も日本にはまだまだ残っている。
 
▼例年だと今ごろにホトトギス(時鳥)の忍音(しのびね)を耳にするはずだが、わが家の近くではまだ聞こえてこない。数日前、久しぶりに生家を訪れた。昔の知恵から、北風を遮るために北側を森で囲んだような家だ。車を降りたとたん、懐かしい甲高い鳴き声。ホトトギスだ。「テッペンカケタカ」とか「特許許可局」とも聞こえるらしいが、筆者には「特許許可局」と聞こえる。不如帰や子規などとも当て字されるが、口の中が薄気味悪いほど赤いため「鳴いて血を吐く」などと言われる鳥だ。この鳥の鳴き声を聞く季節だからやはり時節は間違いなく夏と実感する。
 
▼ホトトギスは夏の渡り鳥として、田植え時期の目安にもなっていた。天下人の性格を表す例えにも用いられる。よく知られる例えだが、信長は「鳴かぬなら殺してしまえ時鳥」、秀吉は「鳴かぬなら鳴かしてみしょう時鳥」、最後に家康は「鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥」と。さて、最近のわが国の首相はと言えば、小泉、菅、安倍の各氏ならどのようになるか。政治姿勢、決断力、実行力、ついでに機を見るに敏も含めて。どれに当てはまる性格か。それとも複雑怪奇か。【天下国家】
                     (2014・6・3)

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