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コラム・筆は一本也

「功を急ぐ」

福島県内の除染で出た汚染土壌を一時保管する中間貯蔵施設の安全性を評価する県の専門家会議は、国の安全対策を大筋で了承するとの検討結果をまとめた。ただ、施設用地を借り上げとするか、買い取りとするか、さらに最終処分場の県外への建設などの詰めの作業は確定しておらず、5月31日から始まる地元住民説明会での県の最終判断が極めて注目。当初、最終処分場を含めた今後の見通しは開けていない状況だったが、国は27日、一転して30年後の県外への最終処分場設置の方針を明記した。

 ▼この際、人の住めない被災地だからーと言わんばかりに地元に貯蔵施設を押し付けるこれまでの無礼さには憤りも渦巻く。施設用地の借り上げや、30年以内の最終処分場への移設などの最優先課題を積み残したままで住民説明会を開けば、不満と失望感だけが残る。そうした直前の状況下での突然とも言える石原環境相の回答。県外最終処分の法制化を明記、確約した。ただ、法制化されたとはいえ、30年後はどのように変転するかわからない。功を急ぐあまり、「策士、策に溺れる」のことわざもある。
 
▼地元説明会には国、東京電力の担当者も出席すべきだし、県の説明に対する補足的な説明のほか、借り上げや30年以内の県外搬入などについて明解な方針を示すべきである。とにもかくにも、まず加害者の東電が国に対応を任せきりにしている印象はぬぐえず、不信感が増幅するばかりだ。これまで周辺の空間放射線量に関しては従来の週1回以上の計測にとどめていたが、常時監視を明確にしている。放射線量は帰還を目指す住民の重大な懸念材料である。
 
▼川内村の長期宿泊も134世帯、276人のうち、わずかに20世帯、40人が申請しただけという。区域内の除染は終わったとはいえ、原発事故前の数値には到底及ばず、インフラ整備も進まぬ上、元通りの生活環境などは望めそうにもない。いかに中間貯蔵施設が急務とはいえ、被災者感情を無視するわけにはいかない。30年といえば人の平均寿命の三分の一強である。その間に廃炉と汚染物質の貯蔵という「お荷物」が存在する限り、地域の進展はあり得ない。40数年前の甘言、詭弁の数々。その二の舞はもうこりごりである。【笑止千万】
                      (2014・5・28)

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