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コラム・筆は一本也

「春の珍事が二つ」

福島県内では例年開花の早い、いわき地方の桜は散り始めているが、中通りの桜は今が見ごろとなり、昨日の日曜日は前日ほどの風もなく、穏やかな花見に恵まれた。水を差すようだが、郡山市役所の隣にある開成山公園で少し気になったことがある。花見の宴の後の残り物である。空き缶や弁当箱などが大きなビニール袋に詰められ、あちこちに集められていた。折り畳んだビニールシートもあった。後で収集車が回収するため、方々に集積してあったような光景だった。しかし、自分たちで出したごみはまず持ち帰るのがマナーだと思うだが。
 
▼さて、「さくら街道」と呼ばれる国道349号の二本松市岩代や田村市船引、大越、それに小野町にあるシダレザクラ(枝垂れ桜)は開花までにはあと数日はかかりそうだ。民家の敷地内にも名もないシダレザクラが植栽され、見ごろの節になるとカメラマンらの姿も目立ってくる。原発事故の処理や震災の復旧工事などで大型トラックの往来が激しい道路だが、名のある一本桜の周辺には地元の人たちが露店を出しているところもある。好きな桜の一つ「合戦場の桜」は、まだつぼみが膨らむ程度で、開花にはあと数日はかかりそうだ。
 
▼再度水を差すようだが、12日に開かれた「桜を見る会」で
安倍首相は上機嫌だったという。花見の宴だからそれは良いが、景気をだしに少々浮かれてはいやしないか。「景気回復の実感を全国津々浦々に届けるのが目標」との“大言壮語”は頼もしいが、突然に飛び出した自慢の俳句には首を傾げる。「給料の上がりし春は八重桜」。まったくもって地方の実体経済がわかっていない、被災地無視の首相の独りよがりにカチンときた。「汚水にもめげずに咲く八重の桜」とでも返しておこう。字足らずだが…。
 
▼よくも能天気な句を詠めたものとあきれるが、それが将来を考えられない為政者の頭なのかもしれない。駄作どころか、差別の句とも受け取れる。地方の中小、零細企業や震災、原発事故の風評被害で塗炭の苦しみを味わっている被災地の企業にとってはとても耐えられない句である。庶民の心情はこうである。「給料のあがらぬ春は桜見ず」「賃上げのなかりし春は姥桜」……。
 
▼人気アイドルグループらに囲まれて花見を楽しんだ安倍首相。同じ日に、慎重な外交政策が求められる中で主要閣僚でもある新藤総務相が桜の美しい靖国神社を参拝した。同盟国アメリカのオバマ大統領は来日を前に胸の内は煮えくり返っているのではないか。今度も内政干渉とでも言いたいのだろうが、毅然とするなら方途が違う。せめて、“同期の桜”への心を桜をめでることでとどめられなかったのか、残念だ。外交に意欲を示す政権のチグハグぶりが際立った2件の“珍事”であった。【桜木武士】
                       (2014・4・14)

 

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