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コラム・筆は一本也

「春本番と元の光景」

万物が清々しく、明るく美しいころを指す「清明」も過ぎ、いよいよ本格的な花見シーズンがめぐってきた。気候温暖な福島県いわき地方は、山間部を除けばサクラはあちこちで見ごろとなり、松ヶ岡公園などの花の名所は待望のサクラを愛でる人たちが引きも切らず訪れている。ネットの交流サイトからは関西、関東地方などあちこちからサクラの開花情報が寄せられてくる。そういえば、震災・原発事故以降、心穏やかにサクラを愛でる機会がなかった。今年こそ、雑念を忘れて、夜桜と花酒を楽しみたいものだ。
 
▼「雨水」の時季に芽を出したスイセンや福寿草、チューリップなども雑草に混じってめげずに開花、民家の庭先などを華やかに演出している。まだ姿は見せていないが、華麗な宙返りを披露しながら間もなく人里にやってくるツバメ。軒下に、辺りの土や泥などを利用して子育てのための住まいを作り上げる。懸命に子育てする光景はのどかな農村風景を思い出す。ツバメの巣ができた家は繁盛する、と縁起のよい言い伝えもあり、高い低いかは別としても
何よりも胸のすくような低空飛行は見ごたえ十分だ。
 
▼小用を利用して先日、いわきの桜花を満喫してきた。山あいの産地直売所でフキノトウを求め、早速てんぷらにして食したが、苦味のある独特の風味はおつなもの。春の旬のわき役だが、なかなか立派に務めている、とほめて上げたい気分になる。買い求めた直売所からは「ツクシも和え物やつくだ煮にするとおいしいですよ」と教えられたが、どんな味わいなのかと気にもなりつつ断ってしまった。そのうち散策がてらに土手のツクシを摘んでみようと思う。
 
▼花より団子と続くが、旬と言えば「上りカツオ」だ。濃いめのタレにニンニクや生姜を入れ、カツオにまぶして今夜食してみようと思う。春のカツオは脂分が少なくサッパリしており、たたきもよいだろう。逆に秋の「戻りカツオ」は脂分がたっぷりで刺身が一番。好みは十人十色だが、旬の食べ物は万国共通に人気がある。さて、週明けの7日は公立小中学校の入学式。一時は児童生徒が激減した福島県だが、徐々に子らが戻り始めた。もとの光景を取り戻すにはまだまだ時間がかかる。【子々孫々】
                    (2014・4・6)

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