あすから新年度が始まる。初々しい社会人1年生が希望を託し、そして不安を抱きながらも第一歩を記す。長年勤めた職場に別れを告げた人もいる。出会いと別れが悲喜こもごも同居する旅立ちの春でもある。出会いと別れは人だけではない。1970（昭和45）年、華々しくデビューした旅客機のジャンボ機がきょうのフライトで現役引退した。全日空が初めて導入した定員500人を超す大型機だが、大量輸送時代の幕開けを告げた。以来、ジャンボの名称はさまざまな形容詞に使われるようになった。
 
▼プロゴルファーのジャンボ尾崎、ジャンボこけし、ジャンボかぼちゃ、ジャンボスイカなどのキャッチコピーが巷にあふれ、大きな赤ちゃんはジャンボベビーと言われた。多くの貴い命を奪った群馬県御巣鷹の屋根の日航ジャンボ機墜落事故は、今も飛行機事故の悲劇として刻まれる。国民的歌手の坂本九さんも犠牲になった墜落事故だ。年間1,200万人を超す来日観光客も大型輸送時代のもたらした産物である。しかし、寄る年波には勝てず、4基のエンジンを備えた飛行機も2基〜3基の時代に入っていく。燃費、機能ともに優れた新型機に押され、老朽化も手伝ってジャンボ機は現役引退した。
 
▼大型輸送も今やエアバスの時代。静かに去る老兵だが、きょうのラストフライトは満席の人気だったという。ここにも出会いと別れがあった。晴れの門出には不吉だが、人生は出会いより別れ(死別)と言われる。二度と会うことが叶わない別れに意を尽くすーという先人の教えだが、退職を迎えた先輩に感謝の気持ちを込めて見送るのは社会人1年生にとって大切な一歩と言える。そして、企業が終身雇用でなくなりつつある今、職業にもさまざまな選択があるだろう。
 
▼社会貢献という職業があってもおかしくないような気がする。今の若者は、日々「働け、働け」と言われた戦後高度経済成長の時代の若者に比べて実に考え方も職業選択も多様である。企業貢献か社会貢献か、それとも企業活動を通した社会貢献か。例えば、新入生や新社会人が1年休学、休職などして自主活動をする「FLY　Program（フライ・プログラム）」に目を向けてもいい。国際的な視野の中で自分の職業を見つめる。「浮ついたことを言うな」と言うなかれ、人を顧みない●企業さん。【公明正大】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2014・3・31）