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コラム・筆は一本也

「庶民増税の余話」

近所の床屋さんはちょっとしたサロンの場であり、そこは開けっぴろげな話をいろいろと聞ける。さしずめ市井の場であり、「浮き世どこ」だが、何かと暇を持て余しているお年寄りたちが三々五々集まっては茶飲み話に余念がない。さて、消費増税が秒読み段階となった昨今の話題はもちろんこのことで持ち切り。「年々、年金は減ってるんだから無駄遣いなんかできないよ」「あんたのところは厚生年金だからましじゃないの。ウチは国民年金、父ちゃんと合わせても10万円ちょっとだよ…」「リンゴづくりも年を取ってやれないし、ジッとしてるしかないかぁ」と続く。
 
▼この時期は増税にまつわる話ばかりだが、愚痴ともつかぬ話が延々と続く。苦肉の策とか、名案が出るのかと思ったら、なんと結論は極めて常識的な節約話で落ち着いた。参考になる増税対策もあった。「賞味期限ギリギリのものを徹底して買い求める」ということだそうだ。スーパーマーケットでは賞味期限が本日限りか、あと1日となると割引幅も大幅で、半値以下も珍しくない。その話に交ざっていた中年主婦いわく。「時間があれば、閉店間際に行くとお買い得がいっぱいありますよ」と。「では、父ちゃんの晩酌前に行ってみるか」「それって本当だよ」…と、あれやこれやの増税対策談義。
 
▼賞味期限切れ間近の食材に絞って閉店間際にドット流れ込んだとしたら、果たして…。売り手と買い手の探り合いのようで、何とも味気ない。それでもって、とにかく割引にならないものはみんなで買わないようにしようーということで意見が一致。この日の茶飲み話の結論付けとなった次第。かりに、こうした消費行動が全国くまなく広がったとしたら商店街はいったいどうなるだろう、と考えてしまった。増税が景気回復に水を差さなければよいが、主婦のシビアな言動も不安材料として気になる。
 
▼床屋談義、巷のうわさとなれば、昨今の8億円融資問題だろう。選挙資金ではないかと疑われている政党代表と会社会長との間の融資問題だが、政治家である代表とその妻、それに会長が絡んでプライベートな関係にまで発展している。そして、あっけなく幕引きされそうな東京都前知事の選挙資金問題。間近な増税で青息吐息の庶民に、こちらは億万、千万単位の青息吐息、とは思えないが、少なくとも常識を逸脱したとんでもないお話。「庶民増税」の余話二題。【乾坤一擲】
                      (2014・3・29)

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