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コラム・筆は一本也

「風評被害をバネに」

福島県産の農産物や海産物に対する風評、不買行為は一向に収まらない。先日、県漁業協同組合連合会(県漁連)はついに地下水の海洋排出を条件付きで容認した。皮肉にも決断したその日に「ノドグロ」が出荷停止となり、地下水の海洋排出が風評被害のさらなる拡大につながるおそれが出てきた。放射能汚染水漏れは依然として続き、コントロールされている状況ではない。タンクから汚染水が漏れ出、地中にしみ込んで地下水と混ざり、原発建屋の汚染水と合流して海中に流れ込む。こうした事態は跡を絶たないだろう。
 
▼果たして、このような「地下水バイパス」計画が有効な手段なのだろうか。東電任せでなく、国策として原発を進めた国も参画し、あるいは海外からの英知を求めるべきではないか。五輪開催を前に余計な諸外国の横やりを避けたいのだろうが、ともかく今この国が最もやるべきことを置き去りにしている。国民の疑念や不安はいつまで経っても解消されないだろう。地下水バイパスを隠れ蓑に、放射能汚染水を垂れ流すのではないかという懸念も強まっている。
 
▼風評被害は福島県内における言動にも一因があるだろう。県内の公立小中学校は、食材によって県産物を使わない給食もある。一方で「福島県産は安全安心です」とPRするのも矛盾−との指摘もある。県や農業団体などが、風評被害の払拭のために安心と安全性を訴えるなら、まず県内、県民を対象に風評被害の払拭に努めるべきだ。そのうえで地産地消なりを徹底する必要がありはしないか。風評被害を生み出しているのは足元の県ではないのか。
 
▼農家の中には「汚染されている物を家族には食べさせられない」と、“本音”を語る人もいる。厳しい検査を目に見える形で消費者に情報提供し、風評払拭に努めるべきではないか。風評は元来無責任なものである。それでも「数字は嘘をつかない」という。これからも地道な取り組みを継続するほかはないと思う。最近、福島県内でも農業法人や事業所などによる「完全閉鎖型植物工場」の建設、稼働が進んでいる。こうしたことに県や国が全面バックアップすれば、風評被害の払拭に大きな味方になると思うのだが。【天下無双】
                     (2014・3・27)

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