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コラム・筆は一本也

「頭にきた天国と地獄」

東日本大震災、福島原発事故からきょう12日で4年目に入った。大震災が起きた3年前の11日。福島県内は強い西風や北西の風が吹き荒れた。沿岸部の市町村は大津波と放射性物質の急襲を受け、避難が続くふるさとは廃虚と化したままだ。この時期はまだ西風や北西の風が吹き荒れるころだが、3年前は皮肉にも海から内陸部へと吹き荒れ、東北南部から関東、さらに関西、九州の一部まで放射性物質が拡散した。もし西風だったらと思うかもしれないが、今度は深刻な海洋汚染となって海の環境や沿岸諸国、そして漁業に悪影響を及ぼしたはず。
 
▼放射性物質を一時保管するタンクは、炉心冷却のための放水で汚染水がすでに満杯となっている。しかし、汚染水は放水などが続く限りとめどなく出る。この汚染水を国の基準がクリアされれば海洋に排水するーとの見解が出されているが、基準をクリアしている農産物さえも、多くの消費者らの拒否反応を考えれば、福島県にとどまらず沿岸漁業はまさに死活問題。国や東京電力も風評被害の甚大さを認識しているにもかかわらず海洋排出を口にする。隣国もさらに本県産への拒否反応を強めてくるのは明白である。
 
▼3年がたち、震災が風化していると感じる人は福島県が被災3県で最も多いという。いつ収束するともしれない原発事故のため散り散りとなって避難する人たちの閉塞、悲壮感が、その要因かもしれない。福島第一原発が県土の復旧を阻み、復興にはほど遠い現状。それだけに原発は県民に重くのしかかる。東京オリンピック開催で復興の遅れを心配する声も多い。緑に抱かれた高級マンションのようなオリンピック選手村の完成予想図、そして被災地の仮設住宅。それぞれの写真を掲げて異を唱えるネット投稿者がいた。「まったく頭にくる」と。

▼頭にきたついでに、ある政府高官が「爆発前だって核実験や自然界の放射線が存在した。いまさら…」と、陰で話していたという。本当なら聞き捨てならない。福島県のケースだが、会津南部など一部地域を除けば原発事故前の放射線量の平均値は毎時0・04マイクロシーベルト。現在はこれをはるかに超えている。そうしたことなど意にも介さないのだろう。風評の払しょくと言っても、これではなくならない。先憂後楽を実行すべき国会議員全員が被災地を訪れ、現状を脳裏に刻んでほしい。決意が問われる4年目だ。【天下泰平】
                    (2014・3・12)

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