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コラム・筆は一本也

「元の木阿弥」

安倍内閣の閣僚がしきりに言う「復興」とは何を指すのか。その真意は。閣僚の曖昧な言動からは疑問だけが残る。東京電力福島第一原発の爆発事故による放射性物質の拡散がもたらした住環境の一刻も早い原状回復なら理解もできる。ところが実際は違う。地震、津波による被災個所の復興だけが中心となっている現状だ。環境省としては除染に目を向けてはいるが、それでも早く避難者をふるさとに帰還させ、任務を終えたいとの魂胆が見え隠れしているような気がしてならない。
 
▼比較的空間線量の低い田村市都路町地区は4月1日に避難指示を解除する見通しとなった。環境省によると、都路町地区東部は空間放射線量が46%減少し、宅地の平均値は毎時0・34マイクロシーベルト。年間被曝線量にすると、政府が避難指示解除の条件とする20㍉シーベルトを下回っている。除染の効果にも疑問があり、やらなくてもいいという意見や税金のムダ遣いだという指摘もある。福島県などは除染の効果的な手法を世界に求めているが、これといった手法は見当たらない。
 
▼国会審議においても除染はもとより、具体的な復興の議論もない。最初の関門ともいえる中間貯蔵施設でつまずいているため、議論が進まないのは無理もない話ではある。さて、新年度当初予算案の審議はこれから本格化するが、予算計上だけなら難しいことはない。同じ被災県の岩手、宮城では急ピッチで復旧復興事業が進んでいる。日ごろから復興を唱える関係閣僚や国会議員、素知らぬふりを通している東京電力の全社員にあらためて汚染地域の現状をしっかり見てほしい。オリンピックもいいが、何が優先順位なのか。
 
▼「国策民営」の原発とはいえ、東電はまず加害企業であることを忘れてほしくない。ややもすれば、東京都民の多くが原発のことなどよその話と受け取っているのではないだろうか。「福島の再生なくして日本の再生はない」。この言葉に、今どれだけの重みがあるだろうか。原発再稼働を方針とする安倍政権は5月にも一部原発の再稼働を認める方針で、さらに青森県の原発新設工事の再開を認める意向を示した。茂木経産大臣は「新規や増設ではない。工事を再開するということ」などとふざけたような発言。これでは元の木阿弥。日本は永久に変わらない。【言行一致】
                       (2014・2・8)

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