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コラム・筆は一本也

「われ関せず、なのか」

「核のごみ」の受け入れ先が決まらない。原発の再稼働を目論む電力各社と国は、最終処分場施設を持たないままで原発推進に躍起となっている。増え続けて堆積する核のごみは、地下に埋設するのか、海外に協力を求めるのかも定かでない。家庭から出るごみさえも、町内会や自治会が集積所を設置し、管理している。可燃物と不燃物、資源物を正しく分別し、収集日と収集時間を決めるなど徹底した管理体制だ。だが、核のごみについてはどうだろう。ひと気のいない間にこっそり出すのか、不埒(ふらち)な輩だ。ひょっとして自分も不埒な一人かもしれない…。
 
▼経済がどうのこうのと訳知り顔で原発稼働にひた走り、あとは知らぬ存ぜぬの輩。豪華なマンションには住んでいても、まさに「トイレなきマンション」の住人である。最終処分場はともかく、その前段階の中間貯蔵施設も宙に浮いたまま。国は福島第一、第二原発周辺の大熊、双葉、楢葉の3町の用地を買収し、1㌔当たり10万ベクレル以下の汚染物質を保管する計画だが、これに楢葉町が拒否、福島県は急きょ大熊、双葉2町に絞って国との話し合いを持つことになった。
 
▼楢葉町を外しても両町の建設面積を変えないとする条件を出しているが、損害賠償や帰還に向けた区域再編などで被災地の住民感情は異なっており、新たな火だねとなる可能性がある。ひと月ほどで震災・原発事故から3年となる。帰還の大前提となる除染も進まないのに加え、除染効果も当初の計画より上がらず、原発事故前の住環境への復旧は絵空事となっている。新聞の読者の欄に「中間貯蔵施設は原発の恩恵に預かっていた東京に造るべきだ」とする投稿があった。怒りの投稿主は、津波の被災に遭った宮城県の人だ。
 
▼東京都民は汚染度の低いがれきの処理などに協力している。被災地に住む者として感謝もするが、それはそれとしてこうした行為はごく当たり前のこと。厄介なものを福島県や新潟県に置き、われ関せずと日々暮らすことが果たして首都に住むものとして許されることなのだろうか。あえて責めはしないが、都知事選候補の応援演説を行った南相馬市長の訴えによく耳を傾けて欲しい。南相馬市だけでなく、被災地はすべてを失っている。親や兄弟姉妹、友、心までもが…。【隠忍自重】
                      (2014・2・6)

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