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コラム・筆は一本也

「希望の灯りを灯す」

映画「喜びも悲しみも幾歳月」(1957年)のロケーションに登場した、福島県いわき市の塩屋埼灯台。岬に立つ白亜の美しい外観は、「日本の灯台50選」にも選ばれた。塩屋埼灯台の復旧工事がようやく終わり、2月22日から一般公開が始まることなった。大震災で灯台の本体に亀裂が生じ、斜面の一部が崩落。海岸沿いの周囲の住宅が流出するなど、沿岸部の光景は一変したが、灯台は震災前と同じように航海の無事を見守っている。
 
▼塩屋埼灯台は福島県内ではもっとも大きな灯台で、海抜73㍍の高台にある。1899年に点灯が始まり44万カンデラで40㌔先を照らし、航行の安全確保を担っている。今回の大震災では発光器も損傷した。発光器は2011年の秋に修復されて点灯されたが、本体の修復や昇降階段の復旧工事が遅れたため公開中止となっていた。麓の駐車場の一角には美空ひばりの晩年のヒット曲「みだれ髪」にちなんだ遺影や歌詞が刻まれた記念碑があり、懐かしい歌声も聴けるとあって観光客の人気を呼んでいる。
 
▼何と言っても有名なのが、灯台守の夫婦の喜びや厳しさをテーマにした映画「喜びも悲しみも幾年月」。主人公の夫婦にはモデルがおり、また、若山彰の同名の主題歌もNHK紅白歌合戦で歌われた。「俺ら岬の灯台守は妻とふたりで沖行く船の無事を祈って灯をかざす灯をかざす」と、哀愁を帯びながらも力強いマーチ調の曲だ。ちなみに、モデルとなった夫婦の二男は福島県の地方紙の記者、社会部キャップなどで活躍した。
 
▼灯台に登れば、白砂青松の新舞子海岸や遠浅の勿来海岸、さらには北茨城の海岸ものぞめる。薄磯海岸と豊間海岸のほぼ中間にあるが、沿岸部はともに大津波で壊滅状態になっており、多くの犠牲者も出した。高台から被災地を見れば悲しい思いがわき上がるが、それでも災害からの復興に明るい光を与えてくれる。そんな中、東京電力福島復興本社の移転先が富岡町になるらしい。東電はこの先、東京の灯りだけでなく、福島の灯りも灯し続けなければならないだろう。【陽光燦々】
                    (2014・1・30)

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