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コラム・筆は一本也

「本音と建前の現実」

東京電力福島第一原発の爆発事故で放射能汚染された高濃度廃棄物の行き先が決まらず、福島県の再生復興を声高に唱える国と被災地の思いの溝は深まるばかりだ。放射能汚染の除染を終え、かりに帰還が可能になっても故郷の一角に廃棄物施設があるのは被災者にとっては耐え難いものがある。被災地に思いを寄せる国民は多いが、それなら福島県以外に中間貯蔵施設を設けようという話になれば、話はまた別になる。
 
▼揺れ動く本音と建前。深まる溝は、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への一連の移設計画を見る思いだ。米軍機とは打って変わって、放射能廃棄物の中間貯蔵施設の設置が予定されているのは大熊、双葉、楢葉の3町だが、楢葉町の場合、大部分が避難指示解除準備区域で帰還に向けた動きが加速している。大熊、双葉両町は逆に帰還困難区域が9割以上で施設受け入れの可能性がある。


▼こうした中で、楢葉町は国の中間貯蔵計画を事実上拒否した。受け入れやむなしとする大熊、双葉両町と楢葉町、さらに他の双葉地方5町村間に不協和音が広がるのではないかーと懸念する声もある。中間貯蔵施設もさることながら、わが国は「原発大国」にもかかわらず最終処分場建設計画は今もって宙に浮いたまま。核燃料を再処理した際に出る高レベル放射性廃棄物は地下300㍍以下に埋設するとの方針だが、火山、地震大国でもあるだけに合意形成のメドは立っていない。


▼今春にも数基の原発再稼働が現実的になっているが、肝心の「核のゴミ」の処分地も決まらないこの状況を政府や電力各社はどう受け止めているのか。これまでのように問題先送りで済ます魂胆のようにも映る。電力需要の高い東京都知事選挙でも再稼働反対が6割前後を占めているが、脱原発を訴える候補者が逆に苦戦しているとされる。風評被害に似た行動で、ひとしきり福島県産の米や野菜はおいしいーなどと答えたあとに他産地の農産物を買い求めるような消費者心理が働く。【清濁併呑】
                  (2014・1・29)

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