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コラム・筆は一本也

「民の声が聞こえるか」

4月の消費増税をあと2カ月余に控え、「家計崩壊」の不安を訴える声が高齢者世帯を中心に日増しに高まっている。消費税8%への引き上げに続き、さらに年末には10%への再増税が判断されそうだ。デフレ脱却、景況回復ムードで安倍政権は何でもありのイケイケだが、一方で企業優先も鮮明。20日の経済財政諮問会議では、法人実効税率を30%台半ばから25%までの引き下げを提言。さすがの麻生財務相も、10%もの引き下げに異論を唱えたようだ。
 
▼まさに安倍政権は、企業 加担分を庶民に押し付けるような政策を打ち出しており、増税による消費の落ち込みは避けられない、と言う見方が支配的だ。家計崩壊がもっとも懸念されるのが高齢者世帯だろう。景況次第では来年10月からの消費税10%も現実味を帯びており、あちこちから悲鳴が上がりそうだ。例えば、公的年金給付の国民年金の場合、ひとり当たりの支給額は月額平均約6万円。70歳〜74歳の病院窓口の自己負担割合が現在の10%から20%に引き上げられる可能性も高い。


▼70歳〜74歳の医療費負担増は17年度までの実施がすでに決まっているが、早ければ4月から前倒しされる可能性もある。15年度をメドとしている介護保険料の引き上げもあり得る。社会保障の縮小などを考慮すると、高齢者世帯の破綻を招きかねない。日本銀行は年2%の物価上昇を「物価安定の目標」としており、目標通りに推移すれば、100円のものが来年は102円、再来年は104円となる勘定だ。生活防衛に走ったとしても、食料品や生活必需品は収入に関係なく支出せざるを得ず、若い世代でも賃金引き上げがないかぎり生活が苦しくなる。
 
▼昨年10月、消費税還元セールの禁止などを狙いにした「消費税転嫁対策特別措置法」が施行された。この法律により、かえって必要以上に価格転嫁が進み、企業の利益が増える可能性がある。清涼飲料メーカーなどは値上げにより、利ざやが厚くなるという。ともかく、大企業を中心に税軽減を目指す現政権。弱者を置き去りに、非情で独善的だという声をよく巷で聞く。外交成果も重要だが、内政がこうではいつしっぺ返しがくるかわからない。【天下泰平】
                       (2014・1・24)

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