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コラム・筆は一本也

「融通し合う、互助の精神」

東日本大震災の津波で発生した堆積物の処理が困難を極める中、県境を越えた自治体間の取り組みが注目されている。宮城県山元町と福島県新地町、ともに津波被害に遭った町だ。山元町では津波で出た土砂を町の復旧工事に使うまでにはまだ時間がかかり、同時に仮置き場の早期解消にも迫られていた。逆に隣町の新地町は復興関連の工事で土砂の確保が必要となっていた。
 
▼新地、山元両町は隣接しているため、搬送コストも抑えられる。このため新地町は山元町の再生土砂の提供を受けることにした。山元町の震災廃棄物の処理で発生する土砂は約80万立方㍍に上る。このうち半分の約40万立方㍍を福島県に搬出する。新地町は県道かさ上げ工事などに活用し、山元町は残る約半分を河川堤防のかさ上げ工事や防潮林の復旧工事などに利用するという。
近く両県が協力に向けた協定を結ぶ段取りだ。
 
▼同じ被災地でも、宮城、岩手両県と比べて福島県は原発災害で復旧復興が大幅に遅れている。今回の取り組みは復興への加速だけでなく、被災県同士の忘れかけていた絆が深まる相乗効果も期待される。こうしたアイデアなりを他県の人たちからもどんどん出してもらいたい。ぜひとも、お知恵を拝借したい。こうした取り組みで身近な交流が生まれ、風化の防止にもつながると思う。
 
▼需要と供給のバランスのように、互いが融通し合うことで双方がプラスとなり、復興の加速にもつながる。背を向け合っているだけでは絆は生まれない、復興も発展も望めない。隣国との関係も同じだろう。震災時の支援を台無しにしたくはない。互いに大人になって見つめることは出来ないものだろうか。「萎縮が進めば、全体主義国家の恐怖となってしまう」と、米国の著名な学者がジャーナリストのインタビューに答えていた。【天下泰平】
             (2013・12・23)

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