「年中正月」という表現がある。正月気分が抜けきらないことを指すわけではなく、日々新たの意味だそうだ。東京電力福島第一原発の爆発事故から間もなく３度目の正月を迎える。被災地にあって現実、事故前の住環境は望むべくもないが、それでも原発立地周辺の双葉郡８町村や各所では途方もない除染作業が行われている。その除染作業も当初の計画から大幅に遅れ、帰還希望者の願いはむなしく消えかかっている。

▼そうした中、環境省は除染を加速化する費用などとして本年度補正予算案に約810億円を計上することを決めた。国は福島県内の市町村除染費用を本年度までに約2,500億円交付しているが、申請が多いために約800億円が不足している見通しという。追加措置と言えば聞こえはいいが、本来の加速化からはほど遠い現状だ。

▼福島第一原発が立地する大熊、双葉両町では原発周辺地域の国有化が検討されている。国有化は事故後から言われてきたことだが、それでも故郷が奪われ、無くなることに大きな失望感を抱く。一帯は核のゴミ置き場となる可能性が高く、原発立地前の低開発地域に戻るだろう。人は住まなくなり、先祖の墓場や先祖伝来の田畑は消えて無くなる運命になる。

▼そんなことは我関せずとばかりに経産省は、特定秘密保護法案が成立した12月6日、どさくさに紛れるように原発再稼働へ向けた「エネルギー基本計画」の原案を示した。原子力発電を「重要なベース電源」とし、原発新設さえもにおわしている。民主党政権が掲げた「原発ゼロ」からの転換を明確に打ち出したわけであり、所詮はのど元過ぎれば痛くもかゆくもないわけだ。【天下泰平】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2013・12・11）