福島県川俣町の絹織物を素材に、日本画の技法を加えたアート作品展が11月17日から横浜市で開かれる。父の故郷福島で2年前から三春滝桜などの名所を取材し、新しいジャンルの作品を生み出している加藤恵さん（横浜市在住）と、コラボレーションする数人のアーティストによる共同イベント。

　今回のイベントは、11月30日まで横浜市栄区役所・新館1階ロビーと同区のイタリアンレストラン「モンテカティーニ」の2会場で開かれる。いずれも入場無料。
　区役所ロビー展は、3人のアーティストと子どもたちが制作したオブジェ（栄区の花・菊）とのコラボ展。加藤さんは、昨年開いた個展の作品に加え、新たにベニバナで染めたシルク・オーガンジー、三春町や会津若松市で写生したサクラの作品を出展する。三春町の国指定天然記念物「三春滝桜」、同町桜谷の「八重紅枝垂れ」、川俣シルクに描いた八重桜の「はるか」など20点。
　加藤さんの作品のメーンは、タイトルにもなっている川俣シルク・インスタレーション「花は咲く」。川俣シルクの作品は、世界一薄いと言われるその特性のインスタレーション形式作品と、「裏彩色」という絹の特性を生かした技法で描いた日本画の額装作品と2タイプ。
　極めて薄く繊細なシルク・オーガンジーを草木染し、日本画の技法で制作したインスタレーション作品。幅97㌢、合計の長さ約30㍍の大作だ。インスタレーションは空間演出のことで、包み込むような空間の感覚を意味する。語源は「Install」、プログラムをインストールすることでもある。

　モンテカティーニのエントランスでは、2人が空間を分け合ってそれぞれ個展を開く。
　加藤さんは、紫根（ムラサキ）、ラック、ローズマリー、クチナシなどの種類の草木染料で染めたオーガンジーに、宮沢賢治の童話の世界をイメージした描いた作品群を、天井の梁7㍍の高さからつりさげる。店内の壁には日本画作品を展示する。
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　「さかえ・ショップ&アート」は、横浜市栄区の商店街が地域振興のため企画したアートイベントで、4回目。期間中は親子で楽しめるワークショップも予定している。

　加藤さんは東京芸術大学院を修了し、現在は多摩美術大に勤務する。東日本大震災・原発事故があった2011年春に福島県入りしてサクラの写生などの取材にあたった。「これからも福島をはじめ、東北地方に花を訪ねていこうと思っている」と話している。

　郷さくら美術館・東京館の石井正伸館長は、加藤さんの作品を評し、＜福島の桜というモチーフ（表面）を、福島のシルク（支持体）に描くことは、 美しい日本画作品としての質に留まらず、 表面に描かれた三大桜として有名で美しい滝桜に対し、 支持体の産地、及び取材地の放射能の問題を抱える地域という 強いコントラストが立ち現れてきます。 加藤さんの川俣シルクの作品は、絵画としての視覚的な満足だけでなく、 3.11以降の世界に生きる我々に大きな問いを投げかけている作品になっている＞（原文のまま）と寄稿している。

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