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コラム・筆は一本也

「冷たく感じる水と心」

水道の水が急に冷たく感じるようになった。それもそのはずで、7日は季節の節目となる「立冬」。原発事故の被災地、福島にも本格的冬の訪れが刻一刻と近づいてくる。北国はそぞろ冬支度が始まるころだが、ここ福島はいまだ早い。山々は鮮やかな紅と黄に染まり、秋の装いへと変身。しかし、畑や庭の柿の木は見放されてこともつゆ知らず、柿色だけが異彩を放っているように思えて仕方ない。

▼「文化の日」の3日はまずまずの行楽日和に恵まれ、県内の名所は紅葉狩りの人でにぎわいを見せた。国花の表象とも言えるサクラは、花開く春先だけでなく、この季節にも見事な紅葉となって私たちを楽しませてくれる。「花は桜木、人は武士」と、散り際の潔いサクラだが、「老い木に花」ということわざもある。ことわざ通りかは知らないが、政界を引退し、再び脚光を浴びている元首相がいる。

▼「原発ゼロ」の社会を訴える、その人小泉純一郎元首相だ。最近は、秋波を送られた社民党党首と会談、肝心の共闘であえなく肩透かしをくらった同党首だが、小泉氏の脱原発への信念は揺るぎなさそうだ。原発を押し進める読売新聞と論争するなど、信念を貫く姿勢は色あせていない。石油メジャーをバックにしたパフォーマンスとの見方もあるが、小沢一郎生活の党代表との連携、政界再編もささやかれている折だけに目が離せない。

▼読売新聞は10月8日の社説で、原発ゼロを目指す小泉氏の考え方を「あまりに楽観的であり、無責任に過ぎよう」と、見識を疑う内容で批判した。これに対し小泉氏は19日の同じ新聞で「政治で大切なことは、目標として大きな方向を打ち出すことだと思う」と反論。原発論争が再び熱を帯びている。ところが、肝心のお仲間である自民党の面々の多くは静観の構え。水道水だけでなく、心まで冷たくなる。【泰然自若】
                                                 (2013・11・4)

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