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コラム・筆は一本也

「疑問な除染費用」

事故処理の廃炉へ向け、100年はかかるとされる東京電力福島第一原発。公的管理下にある東電は、賠償や除染、廃炉に伴う膨大な負担を背負い、先の見えない中で新たな支援の枠組みを国に求めている。その東電に対し安倍首相は先月、法的に破綻処理することに否定的な考えを示している。衆院本会議の代表質問で「引き続き民間企業として損害賠償、廃炉、汚染水対策、電力安定供給などを確実に実施していくべきだ」と答え、東電を会社更生法に沿って法的整理を進めた場合のマイナス面を指摘する。

▼東電が法的整理された場合、まず被害者への賠償が支払われない恐れがあること。事故収束作業に当たる企業の取引債権も滞り、さらに海外からの燃料調達や権益確保にも支障が生じる、とマイナス面を挙げる。では、これからの東電に膨大な負担能力があるのかということだが、少なくとも現時点では極めて厳しい。かといって、このままの状態で国費(税金)投入も釈然としない。公的管理下にある東電はこれからどのような道を模索しようとしているのか。

▼一方で、原発事故避難者の早期帰還や避難指示解除後の精神的損害賠償の早期打ち切りを検討している政府と東電の密接な関係がまたしても浮き彫りとなった。限定的ながら東電の除染費用の支払い義務を免除しようというものだが、被災者をはじめ国民の理解を得られるのか、こちらも疑問が残る。環境省は除染関連予算約1兆3千億円のうち約4700億円を支出しているが、東電に請求した約400億円のうち東電が支払いに応じたのはわずか70億円弱。

▼そうした中、12年度の除染関連事業で本年度への繰り越しが2757億円に上り、消化率が39%にとどまったことが会計検査院の調査結果で明らかになった。多額の予算が繰り越され、“塩漬け”になっている実態が浮かび上がった。その除染だが、帰還困難区域は手つかずの状態。果たして10兆円にも及ぶとされる除染費用を費消しても、どれだけの効果があるのか疑問である。全員帰還は現実無理であり、こうした膨大な予算を被災者の生活再建や居住困難な自治体、地域の集団移転のための予算に振り向けるべきだ。【天下泰平】
                                  (2013・11・1

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