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コラム・筆は一本也

「ふくしまの農業」

収穫、食欲の秋を迎え、秋冬の野菜が高値圏だ。このところの連日の降雨で葉物の成育が遅れ、しかも畑の冠水で収穫作業が難航しているという。収穫期を迎えた秋キャベツも雨の影響でひび割れを起こし、値上がり要因の一つとなっている。露地ものはとかく天候に左右され、寒暖の変化や日照不足に悩まされるのは仕方がない。鍋料理が恋しくなる季節になったが、野菜の具だくさんは当分はお預けだろうか。

▼片や日本のコメが岐路に立たされている。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で日本の掲げる最重要品目の一つだが、年内妥結をめぐっては関税交渉が大詰めを迎える中、聖域の一番手・コメの関税存続自体が危うくなってきた。政権与党の公約違反ではないかという声が早くも出始めている。いわれ続けてきた「農業は国策の基本」はすでに有名無実。置き去りにしてきた農政のつけが回ってきたような感だ。

▼原発事故で人口流出が続いた福島県だが、産業は大きな期待が持てる。製造品出荷額は東北一、農業産出額では青森県に次いで2番目。コメの収穫量は米どころ秋田県と肩を並べる存在になっている。しかし、駆け引きが続く伏魔殿のようなTPP交渉で、基幹産業・農業は一体どうなるのか見当もつかない。本県だけの問題ではないが、関税が取り払われて安い農産物が輸入されるとなると、これまでの農業は壊滅的打撃を受ける恐れがある。

▼農業本来の1次産業にとどまらず、加工・流通・販売など2次、3次産業を取り込む6次産業化への取り組みや、農業のブランド化、レストラン事業参入など新しい農業への転換が始まったばかりの日本の農業。わが国の食糧自給率が40%を切った中、東北の自給率に限れば100%近くを維持している。東北6県は広大な平野と山間の丘陵地帯があり、水耕栽培と畑作両面での耕作が可能という。さて、ふくしまの農業の将来は。【泰然自若】
                    (2013・10・27)

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