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コラム・筆は一本也

「いつものなし崩し」

東京電力福島第一原発の爆発事故が東日本一帯に広範囲にまき散らした放射性物質の除染作業が、福島県など関係する東北、関東の他県で行われている。環境省によると、福島県以外で汚染状況重点調査地域に指定されたのが60市町村。このうち、除染実施計画が未策定の2市を除いた58市町村の除染作業は順調に進んでいるという。学校・保育園などが96%、公園・スポーツ施設が85%の進捗。住宅の実績戸数は約66,000、前回の約30%から約44%に増えた。

▼一方の福島県だが、2013(平成25)年5月末現在の除染業務委託を発注済の市町村は36。13年度計画の住宅戸数231,906に対し、発注済92,724、完了は28,751。まだ、1割程度の完了率だ。公共施設や農地は比較的進んでいるが、住宅、生活圏森林は低調。私事になるが、拙宅で先週末から屋根や外壁、雨どいなど除染の高圧洗浄が行われた。庭などの数値が高い所は手つかずの状態。別の下請け業者が作業するらしいが、人出不足で遅れているようだ。

▼政府は除染の長期目標に年間1㍉シーベルトを掲げている。ところが、国連の関連機関である国際原子力機関(IAEA)の除染支援団長が口を差しはさむような発言。「(1㍉シーベルトに)必ずしもこだわる必要はない」という。国際的基準は確かに年間1~20㍉シーベルトの範囲内だが、原発を推進するIAEA関係者がコメントなりすることではないと思う。まして、福島県内に同機関の施設が開所しようとする矢先である。

▼国や東電は5兆円、その数倍とも言われる除染費用を損害賠償と同じく1年でも早く終わらせたい意向だろうが、まずは住環境の整備が復興への前提条件。当然の話だが、人の生活基盤となる住環境の整備なくして全産業の復旧復興はありえない。仮に1㍉シーベルトにこだわらない環境のもとでの帰還要請があっても、自治体は住民を交えて慎重に議論すべきだ。陰に陽に福島県への支援ならともかく、からめ手の如くのなし崩しは要注意だ。【天下泰平】
                      (2013・10・24)


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